コラム

企画の小窓〜コラム〜

2017.09.22

五発目 絵と文で伝えたもの

五発目 絵と文で伝えたもの

〇グラビア「実に帰る」


 開祖は少林寺拳法教範の中で、技は絵にも文にもならない、と述べています。私もそう思います。しかし出版物を通して読者に情報を伝える立場としては、絵と文で伝えるしか方法は有りません。文で伝える努力が「拳理体感」であり、絵で伝える努力がグラビア「実に帰る」でした。このグラビア「実に帰る」は、「あらはん」誌上の巻頭を飾る企画でした。


 毎月の「崩し」「一気動作」「当て身の五要素」など「拳理体感」のテーマを同じ号のグラビアで表現してみようという意図で編集をしていきました。それまでの技の写真というのは、ポスターや、パンフレット用に、絵になるようにカメラに合わせてタイミングを取り撮影していました。


 「実に帰る」シリーズはその逆で、技を本気で行い、カメラマンがこちらの意図に合わせてシャッターを切るというものでした。別にそれがどうしたと思うかもしれませんが、これは実際に撮影するカメラマン、被写体となる新井先生や山崎先生をはじめとする本部職員のみなさん全てが大変な思いをしたのでした。


〇アナログな時代


 1986年私が「あらはん」編集部で仕事をすることになった頃、世の中はまだまだアナログな時代でした。パソコンを仕事に使う人は少数で、やっとワープロが一般的に普及してきた程度。私が原稿を書く際にも、まだまだ原稿用紙を用いていました。2017年9月現在、プロも含めて我々が写真を撮るという場合ほとんどデジカメで撮影をします。たとえカメラが無くてもスマホでも十分きれいな写真が撮影できます。


さて「実に帰る」です。


 原稿用紙に手書きで現行を書いていた時代、写真はフィルムに撮影するものでした。デジカメは撮影したらその場で写真をチェックできますが、フィルムではそうはいきません。撮影終了後現像に出し、納品されたポジフィルムを見て、使用する写真の選択をしていたのです。

今なら高速での連続写真も撮影できますので、一回真剣に技を行い、うまくいけば一回でOKを出すことが可能です。

アナログの時代は連写のスピードが遅い為、一枚一枚タイミングを見極めてシャッターを切らなければなりません。技が完璧でも、シャッターのタイミングが合わないとNGです。ここにカメラマンの苦労がありました。逆にカメラマンがシャッターのタイミングがOKだと思っても、その場で映像を確認できないため、どうしても押さえの写真を撮ることになります。

撮影の際、技は馴れ合いなしのガチンコで行っていたため、新井先生や山崎先生といえども時には失敗したり、うまくいったとしても本人が納得しない場合もあります。そうなるとNGになります。小手投、巻落といった投技の撮影では、ワンカット取るのに、柔法マットなどない固い桜の木の床に50回ほどなげられるのは当たり前でした。みんなが体を張って撮影に取り組んでいたのです。        (つづく)