「世界の拳士が教えてくれたこと」

2023/11/21

ph_arai

合掌

夏の暑さが「これでもか」というほど続き、秋を感じる間もなく冬がやってこようとしています。厳しい季節の変わり目となりましたが、みなさまがご健康に過ごされるよう心より願っております。

さて、長らくメッセージが発信できておらず、大変失礼いたしました。

この期間、当連盟では「2023年少林寺拳法世界大会in Tokyo, Japan」という大きな事業があり、関係各位のご尽力のおかげで無事盛会裏に終了することができました。本事業は、本来2021年に開催予定でしたが、コロナ禍にあって延期を余儀なくされたものです。世界大会は4年周期での開催なのですが、今大会は6年を経ての開催となりました。にもかかわらず、本大会に海外から過去最多の参加者があったのは、世界中の拳士がいかにこの機会を楽しみにしていたかということを物語っている気がします。世界大会にはもちろん競技もありますが、それ以上に世界中の拳士が集う交流の祭典です。

大会会場と、その後に行われた国際講習会の会場では、言語・文化・宗教などを越えて、さまざまな国籍の人々が実に楽しげに交流していました。折からの円安が追い風となった向きはあるでしょうが、彼らを突き動かしたのは、創始国・日本への強い思いであったと私は感じ取っています。少林寺拳法創始の地を訪れた拳士の中には、涙を流して喜んだ者もいたと聞いています。少林寺拳法のオリジンを肌で感じ、いわゆる本場の指導者に薫陶を受ける。それを持ち帰って、再び修行の日々の糧とする。そういう真摯な思いを感じ、私自身も一層の精進を心がけようと身が引き締まる思いがしました。

かつて創始者・宗道臣は、中国河南省の嵩山少林寺において、肌の黒いインド僧と肌の白い中国僧が楽しげに武術を演練している様子を描いた壁画(羅漢錬拳図)を見てインスピレーションを受けました。そのインスピレーションをもとに、少林寺拳法の修練は人と人とが仲良くなるためのツールとして確立されたのでした。

「人と人とが仲良くなる」今ほど、その重要性を感じないことはありません。と同時に、宗道臣の慧眼に唸るような気持ちにもなります。仲良くなるための修練ですから、大会でも、主に二人一組で行う組演武を評価します。互いの個性を活かし合い、演武を創り上げていく過程は、新しい発見とお互いを認め合う気持ちに溢れていて、とても楽しいものです。相手を打ち負かすならば、相手の弱点を見ますが、二人で創り上げるならば、相手の優点を見なければならない、ということです。

創始国で修行に励む者として、私たちはこの在り方に誇りを持ち、その実践に邁進しなければなりません。そして、このような在り方が、国と国の間でも当たり前になれば、きっと世界は本当の平和に近づくことができるはず。世界の拳士は、この在り方が、言語・文化・宗教などを越えて共感し合えるものであるということを私たちに教えてくれました。みなさまが少林寺拳法をさらに深く、楽しむことができますように心から祈念いたします。

結 手