vol.08 「信頼と感謝」
2015/11/01

晩秋から初冬にと無常の時を過ごす毎日、境内から鳥のさえずり、見上げると小枝にツガイか親子か二羽の鳥、葉が風に揺られるなかで温かそうに寄り添っています。同じように人間も互いに寄り添える幸せを願っているのではないでしょうか。
頼り、頼られる信頼は何物にも代えがたい人生の支えともなるのです。
先日、えひめ障害者ヘルパーセンターの皆さま(全盲の方々40名にヘルパーさんが40名)が本山に来山されました。まず仁王門から石畳を通り、境内で職員より金剛禅の歴史について説明をうけました。次に本堂へ向かいます。長い下り階段、杖を使い全盲とは感じさせない程の軽快な足取りで降りる方、またヘルパーさんの声を頼りに足の指先を階段の角に擦りながら降りる姿を目の当たりにしひと安心しました。というのも、数か月前にご連絡をいただいたときに心配したのは、金剛禅総本山少林寺は、傾斜地に作られた建物のため階段が多く、障害者の皆さんにとって階段歩行に困ったり転倒するのではないかと心配でした。
しかしその心配をよそに、あっという間に皆様階段下の本堂に移動されたのです。自らの足の指先とヘルパーさんの声を信じ、前に進む姿に教えられることが多く感心させられました。まさに人の文字のごとく支えあう中での信頼を見た思いです。
本堂に移動したのちには、床に座る方、イスを運び腰かける方とそれぞれ居ましたが、祭壇の達磨大師の説明と法話「信頼関係」をご清聴いただきました。その後、握手をさせていただき、合掌されながら本堂を後にされます。その後ろ姿は健常者と変わりなく、下りるよりも若干早いような気がしました。
短い時間ではありましたが、「一期一笑」で下山され帰路につかれました。私の掌には今も握手した皆様のあたたかい温もりと、感謝の気持ちが残っています。
自らを信じ、他人を信じる幸せ。宗道臣開祖のことばのとおり「半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せを」ですね。
金剛禅の教えは心も人生も豊かにしてくれています。出会うすべての人に鳥にも自然にも感謝です。 合掌
(vol.6 2015/11/1)