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「教えの言葉ひとつとっても、経験と問題意識の持ちようで、受け止め方に差が出てくると思います」

2017/06/28

学習院大学OB相浦正文氏に聞く

Q.少林寺拳法との出会いは、人生にとってどのような価値がありましたでしょうか?

武道との出会いは伝統空手でした。高校の時、近所の福岡大学の学際で少林寺拳法の演武を見て感動し、書籍秘伝少林寺拳法を読み、これだ!と思いました。学習院大学入学直後、少林寺拳法部の先輩から勧誘され迷わず入部しました。その後少林寺拳法部で練習すると共に、道院でも修行することとなり、大学時代に道院の助教を経験できたことも、大学と道院での素晴らしい出会い、人生の支えとなっています。

 Q.学習院大学と言えば、年齢からすると皇太子さまとご学友だったでしょうか?

姉は同級生でしたが、私は一つ下級生になります。学内の本屋さんでもよくお会いし、SPの方が近くにいても気さくに周囲にお声をかけられる方でとても印象深い方でした。

Q.少林寺拳法部ではどんな思い出がありますか?

入部すると、毎週監督の秋吉先生が来られ、まず学科の講話が長い時間ありましたが、武道に興味があった私には、とっても長い(苦痛)時間に感じました(笑)。でも監督が帯にタオルをぶら下げて、熱心にご指導下さった技法指導はとても納得でした。なにより先生の偉ぶらないその姿勢に、少林寺拳法の先生はすごいなあと感じました。それから30年を経て、秋吉監督が福岡に来られその講話を聴いて感動しました。講話の後、秋吉先生に「学生時代には全く頭に入ってきませんでしたが、今日のお話は、ズンズンと心に刺さるお話しでした」と、恐る恐る告白すると、先生は、「相浦も成長したなあ」と笑って下さいました。改めて、秋吉監督との出会いに感謝しました。

Q. 学生時代に道院の助教を経験されたと伺いましたが、どんな思い出がありますか?

副将だった三浦君が、近所の道院に行こうと誘われ見学にいくと、その合理的修練と電光石火のごとく激しい乱捕りに憧れ入門をしました。他大学の少林寺拳法部の学生も沢山おり、大学とは違う道院の雰囲気にハマってしまいしました。印象的だったことは、道院長や幹部の先生方の楽しい法話と、ご馳走は、下宿生にとっては、懐も心も寂しかった私を十分に癒して下さいました。今、子供たちに育てる少林寺拳法を実践しているのは、鍛える少林寺拳法と、養う少林寺拳法を繋いでくれた学生時代の道院であったと感謝しています。

Q. 少林寺拳法は、現在のお仕事にも影響していますでしょうか?

大学卒業後、銀行マンを経て父の会社を継ぐことになり、今は機械製造販売会社を経営しておりますが、アジア近隣諸国に会社を設立する際にとても役立ちました。当時、畳製造の機械を作り、人件費の安い国で製造すればと思い、人が裸足で歩いている奥深い地域に営業に行き、交渉・指導に成功した事です。なんと言っても、「半ばは他人の幸せを」を心がけ、言葉もままならない状況であっても、自社の製品を自信を持って諦めずに根気よく粘れたことは、少林寺拳法の教えそのものだと思います。接待で出された仰天の山もりの鶏の手にも、海外持ち出しが厳しかった外貨を当該国にて闇金融でドルに変え持ち帰った事も少林寺拳法で培った度胸のお陰です。(笑)その後、公の機関が儲かると分るや否や、特許などを無視し、コピーをし始めた為、撤退を余儀なくされました。しかし、七転び八起きの教えが功を奏し、現在は、健康飲食品製造機械に重点を置き、有名企業のお仕事をさせて頂けております。

Q.現在、少林寺拳法を継続されているとお聞きしましたが、近況をお願いします。

大学卒業後は、銀行マンとして、とても忙しく少林寺拳法は継続できませんでしたが、それでも、健康のために気功を習ったりしていました。父の会社を継ぐため、福岡へ帰省後、母校の練習会に参加するには遠いため、近くの道院に子供と一緒の参座することになりました。友人の家庭では激しい反抗期があると聞いていましたが、我が家では、少林寺拳法のお陰で、そのようにならなくて救われました。今では、道院長より副道院長を拝命し、少年部の育成に携わっています。また、福岡の武専コースに通っていますが多種多様の異業種にお勤めの幹部拳士の方々と交流ができ、仕事にも大変役立っていますし、仲間が増えました。

Q.最後に、今後の抱負をお聞かせ下さい。

鎮魂行を行うたびに思うことですが、調和の世界を説く我々は、まず他人と同調し、その上で相手の立場にたって思いを伝えないとうまくいかないことに、あらためて気づきました。自分の考えが絶対と思った時点で対立が起こってしまいます。万能の人間はいませんから、相手の良い所を認めない限り自分も認められないと、自他共楽の意味がわかる年齢になりました。少林寺拳法との出会いは、私の人生にとって価値あるものでしたから、私もこの価値を後進に伝えてゆきたいと思います。最後に、少林寺拳法の科目表は非常に素晴らしいのですが、技法指導を通して、各資格では人づくりのための仕掛けをどのように作るか、話しをするかを毎回考えて、カリキュラム作成をしています。自分も楽しみながら成長するとともに、子供たちが、将来、厳しい社会を乗り越えながら、役立つ人になれるように、願っております。

楽しいお話しと、本部への課題を頂き感謝します。ありがとうございました。引き続き、楽しみながら、後進の指導を頂きますよう、よろしくお願いします。                             (平成29年4月10日 羽犬塚にて)

【相浦正文氏プロフィール】1960年(昭和35年)福岡県生まれ。学習院大学卒業後、東京相互銀行に勤務。現在、株式会社ワコー代表取締役。筑後道院副道院長。趣味は、バイクツーリング。家族構成は、妻と息子2人。