vol.28 なごり雪

2013/05/01

aun_i_vol28児童養護施設「R学園」にいたKちゃん。Kちゃんは高校も支援学校に通っていた。軽度の知的障害があった。Kちゃんは高校を卒業し、施設からも卒園。そして、我が道院からも卒院となった。施設の子と拳士たちだけで卒院式を行った。

そのときの私のスピーチ。「昨日からこの時期には珍しく雪が降っています。こういう雪をなごり雪といいます。まさに、君とまだ別れたくない、名残惜しいという先生やみんなの気持ちを物語っているようです。君は初段まで取ることができました。1回目の試験で君は学科で不合格となりました。再試験を受けるにあたって、君はすごく不安で稽古が終わると泣き出してしまいました。先生は、そんな君のそばで30分近く『大文夫だ、大丈夫だ』と言い続けました。君は見事に黒帯を取ることができました。このことはこれからの君の人生にとってもすごく大きな自信となっていくでしょう。それを支えに頑張ってください」。

その後、卒業者からの言葉では、Kちゃんは今までの少林寺拳法を振り返り話をした。途中で涙が止まらず何度も道衣で涙を拭っていた。そして最後にひと言、「長坂先生、今まで本当にどうもありがとうございました」。その瞬間、私も涙が止まらなかった。他の子たちもみんな泣いていた。

気がつけば、外の雪もいつの間にか雨に変わっていた……。
(橋本西道院 長坂 徳久)

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