Vol.31 アジアの理解と協力のために

2015/03/05

戦後最悪といわれるほど悪化してきた日中、日韓関係のその改善の兆しはまだ微々たるもので、民間の努力が大きな望みです。

そんな中、政府間の摩擦とは別に、東京や日本あちこちの観光名所は中国からの観光客でにぎわっています。メディアを通しても、「爆買いツアー」が話題となっています。炊飯器やウォシュレットなど、性能のいい日本製品を持ちきれないほど求め、家電量販店の近くに観光バスが並ぶ光景が報道されます。しかし、行列への割り込みや、集合時間に30分以上遅れ、バスが出発できず交通渋滞が起こっているとか、道端で大型のスーツケースを広げ、物の出し入れをしているなど、マナーが悪いというイメージばかりが強調されているように思います。
比較的自由に外国旅行ができるようになった中国からの観光客は、子供のころから反日教育されていたとしても、日本に来て観光地を巡り、街の清潔さと日本人の親切さに感心し、また来たいという気持ちを抱く人が大半だといいます。こんなに成果を上げている両国間の民間交流を、メディアはもっと報道すべきではないでしょうか。直接見る、聞く、触れる、その効果は絶大です。

少林寺拳法グループでも、ここ3年ほど中断していた大型訪中団交流を再開します。もともとは、2011(平成23)年に、少林寺拳法創始者・宗道臣生誕100年事業として計画されたものでした。しかし、ご承知のとおり、11年は3月に東日本大震災が起こり、しばらくの間、日本の半分の機能が停止し、訪中どころではありませんでした。全国大会や各種行事を中止し、その人力をボランティアにシフトし、13年に予定どおりの訪中事業を再開しようとしたやさき、日中関係の悪化が急加速し、当初予定されていたこの事業のメイン企画であった北京でのシンポジウムの開催が不可能となり、やむなく大型訪中団による交流事業を断念したのです。

40年前、少林寺拳法単独の訪中団派遣による交流事業に17歳で参加した私の実感は、体験に勝るものなし、食わず嫌いはいけないということでした。日本に訪れる中国からの観光客が日本に親しみや感動を覚えるように、私たち日本人も直接広大な大陸“中国”に触れ、同じアジアで生き同じような顔をしながらも、違った文化の中で育った考え方や習慣を目の当たりにすることで、きっと新鮮な体験ができると思います。

少林寺拳法グループの日中交流は、これからもアジアの理解と協力のために続けてまいります。