レジリエンス ―逆境から立直る心

2019/05/08

 子どもの成長過程はいつも順風満帆ではありません。友達との仲たがいや成績不振、スランプ、孤立、いじめ、家庭の不和、養育者の病気や死そして災害などによる生活環境の激変…などさまざまなストレスとの出会いでもあるのです。ストレスに圧しつぶされそうになった時、何とか立ち直り、その体験を活かして更に成長する子どもと、ストレスに圧しつぶされたままなかなか立直れず、マイナス体験をいつまでも引きずってしまい自信喪失に陥ったり〝負け犬”のようになってしまう子どもがいます。

 挫折や逆境などに出会った時のこうした対処の差はなぜ生じるのでしょうか?近年、心理学では、こうした、人間の持つ立直る力ーレジリエンスに注目した研究が増えてきました。私自身は「勁(つよ)い心」という言葉を使うことがあります。「勁い」とは、風が吹いても折れず、踏みしだかれてもまた立直る草のようなしなやかなつよさを表します。

 レジリエンスが身につく条件としては次の5つの要素が必要とされています。⑴自尊感情…自分を肯定する気持、⑵自己効力感・・・「自分ならできる」という気持ち、⑶感情コントロール…やたらに一喜一憂せず冷静でいる、⑷安定した人間関係…見守られている関係や信頼できる関係、⑸楽観性…困難があっても「一時的」ととらえたり、自分の中の「一部にすぎない」ととらえ乗り越えていく力。

 この5つのなかに、親として、指導者として、子どもの心にしっかりとしたレジリエンスを育てるヒントがあるのです。

□子どもをたっぷり可愛がる・子どもの心を大事にする・ほめる・励ます

□出来なかったことを非難するのではなく「ここまでやれたね」と出来たことを認める

□大人自身が冷静な判断力を持つ・物事を客観的にとらえる目を養う

□いかなる時でも子どもを守るという姿勢を示す

□出来事を悲観的にとらえず、前向きにとらえていく知恵を教えていく

 

【執 筆 者 : 菅 野 純】 1950(昭和 25) 年 、 宮 城 県 仙 台 市 生 ま れ 。 早 稲 田 大 学 卒 業 後 、 同大 学 院 修 了 。発 達 心 理 学・臨 床 心 理 学 専 攻 。東 京 都 八 王 子 市 教 育 セ ン タ ー 教 育 相 談 員を 経 て 、早 稲 田 大 学 人 間 科 学 学 術 院 教 授 を 2015 年 3 月 ま で 務 め る 。現 在 も 、不 登 校 、い じ め 、非 行 な ど 、さ ま ざ ま な 子 供 へ の カ ウ ン セ リ ン グ に 加 え 、学 校 崩 壊 を は じ め とす る 学 校 の コ ン サ ル テ ー シ ョ ン に 取 り 組 む 。 < 心 の 基 礎 > 教 育 を 学 ぶ 会 会 長 。 著 書 は 『 武 道 ─ ─ 心 を 育 む 』( 日 本 武 道 館 出 版 ) な ど 多 数。