vol.09 今が一番動ける時
2010/06/01
道を歩いていると、大きな荷物を抱え片足を引きずって駅に向かうご婦人を見かけました。お声をかけて途中までご一緒しながらお話していましたら、私もお会いしたことのある有名な義肢装具士の所に行かれるところでした。膝(ひざ)を悪くされていて、京都の知人の紹介で神戸から75歳とご高齢ながらお一人でいらしていました。本当に合う器具が出来ているのか不安そうでしたので、「その先生ならきっと合うようにしてくださるはずです」と申し上げると、柔らかな表情になられました。
別れ際、その方がおっしゃったのは、（一緒にいた私の娘を見ながら）「今は、たくさんのお金と大きな家がありますが、身体がこうではやりたいことができません。若いときは仕事をして落ち着いてからなんて思っていましたが、落ち着いたころには動けない……。子育て中の今が一番動ける時です。やりたい事は何でもなさってください。すべてのやりたい事を今なさるおつもりで」。大きく背中を押していただいたような、心に留めておきたいお言葉です。今ごろは笑顔で神戸に戻られていることを願ってやみません。
（沖縄礼邦道院・島袋容子）
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