元気とやる気の

2015/03/24

指導者がいくら熱心でも、子供の心が散漫だったり無気力だったら。つまり「やる気」がなければ、せっかくの指導も実りません。
 子供のやる気はどのように形成され、どのような状況のときに枯れてしまうのか? 親の願いや指導者の思いが子供の心に根づくためには、何を心がければよいのか? 本コラムでは事例をきながら考えていきたいと思います。

 今回は、元気、やる気の「」について説明します。もし、ある子供の頭の中に急にすてきなアイデアが浮かんだとしましょう。手元のノートにそれを忘れないうちに書き留めておこう、そう思うのですが、あいにく筆記用具を持ち合わせていません。そこで、そばにいた先生に、「先生、鉛筆を貸してください」とお願いしたとします。そのとき、先生がその子の方を向くこともなく、「ほらっ!」と鉛筆を投げてよこしたら、子供はどんな気持ちになるのでしょうか? 「僕のことを怒っているのかな?」「僕のこと、嫌いなんだ」、そんな思いにとらわれてしまい、せっかく頭に浮かんだすてきなアイデアを書き留める意欲をなくしてしまうことでしょう。これとは反対に、「何かいいアイデアが浮かんだのかな? どうぞ」と笑顔で鉛筆を手渡してくれたら、子供は何だか先生に励まされたような気がして、ノートいっぱいにアイデアを書き続けるかもしれません。
 親と子、先生と子供、指導者と弟子……人と人との間には、こうした心のエネルギーが行き来します。ちょっとした言葉の交わし合い、まなざしの向け方で、心のエネルギーを満たされたり、反対に吸い取られたりするのです。
 元気、やる気の素、それをこれから「心のエネルギー」と呼んでいきます。道場にやってきた子供がどの程度の心のエネルギー状態なのか。指導のスタートは、子供たち心の状態を理解することから始まるのです。

執筆者:菅野純 1950(昭和25)年、宮城県仙台市生まれ。早稲田大学卒業後、同大学院修了。発達心理学・臨床心理学専攻。東京都八王子市教育センター教育相談員を経て、早稲田大学人間科学学術院教授を2015年3月まで務める。現在も、不登校、いじめ、非行など、さまざまな子供へのカウンセリングに加え、学校崩壊をはじめとする学校のコンサルテーションに取り組む。<心の基礎>教育を学ぶ会会長。著書は『武道──心を育む』(日本武道館出版)など多数。