vol.05 左手で箸

2009/07/01

aun_i_vol05左手でも箸が使えるようにと訓練を始めてすでに20数年。今では両手で自由に操れる。

それでも最初のころはやはり苦戦した。慣れない左手での操作という以上に、右手の「出しゃばり」に手を焼いた。不器用な左手をかばおうとしてやたら出しゃばる右手。持った茶碗を無意識に口に近づけようとする。「利き手」である右手で箸を使っていたときには気づかなかった食事中の、茶碗を持つ左手が担う役割の重要性というものを知った。左手は「主役」である右手が活躍しやすいように最高のサポートをしている。主役を立て、脇役に徹し、決して出しゃばることはない。訓練のスタートは、まず右手の「出しゃばり」に釘を刺すことだった。稽古のときも、左手で技を掛ける際に気をつけるべきは、右手の「いたずら」だということに気づいた。
 

人との関わりに置き換えた。周囲に対して、常に「右手」でいようとする自分はなかったか。我々指導者は立場上「右手」でいることが多い。が、それに馴れっこになってはいけない。所変われば立場も変わる。

器用さだけを前に出す指導者にはならぬよう常に心がけたい。
(群馬前橋道院・江原謙治)

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