心のエネルギーの原点としての「 抱っこ」

2015/11/26

もしあなたの子どもがまだ乳幼
児だったら、あなたはどのように
してわが子に心のエネルギーを与
えていたでしょうか。転んで泣いている時、気分がすぐれずぐずぐずしている時、友達と何かあったらしくべそをかいて帰ってきた時、あなたはどのようにしてわが子の心をいたわり、慰め、元気づけたでしょうか。言葉で「痛くない、痛くない!」と言っても泣き止まない、「しゃきっとしなさい」とう言ってもよけいへなへなねになってしまう、「他人の言葉に傷つくな!」と言ってもよけいにしゅんとなってしまう。
 こんな時、あなたはわが子を抱きしめるのではないでしょうか。抱くことで寒さ、暑さ、攻撃者など危険な環境からわが子を守ります。単に外部の刺激からガードするだけでなく、やわらかい皮膚感覚を通して生きることの心地よさ、安心感、そして人間に対する信頼感が育つのです。この「抱っこする」ということは人間が生物学的レベルで持ってる子育ての原点のです。
 成長と共に「抱っこ」は少しづつ形を変えていきます。
①「言葉」で抱っこする・・・認
める言葉・誉める言葉・励ます言葉・慰める言葉・ねぎらう言葉・感謝する言葉など言葉でその子の心を包むことです。仏教では「愛語」といいます。
②「目」で抱っこする・・・暖か
い目、成長を信じる目で見守ることです。
③「耳」で抱っこする・・・子ど
もの言葉によく耳を傾け受けとめることです。
④「しぐさ・行為」で抱っこする
・・・ハイタッチする・うなずく・握手する・背中をなでる・頭をなでる・その子の作品などを飾ったり丁寧にファイルしたりすることです。
 親や指導者はこうしたさまざまな「抱っこ」をその子なりに使い分けて、心のエネルギーをしっかり与えたいものです。

執筆者:菅野純 1950(昭和25)年、宮城県仙台市生まれ。早稲田大学卒業後、同大学院修了。発達心理学・臨床心理学専攻。東京都八王子市教育センター教育相談員を経て、早稲田大学人間科学学術院教授を2015年3月まで務める。現在も、不登校、いじめ、非行など、さまざまな子供へのカウンセリングに加え、学校崩壊をはじめとする学校のコンサルテーションに取り組む。<心の基礎>教育を学ぶ会会長。著書は『武道──心を育む』(日本武道館出版)など多数。