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vol.24 法縁

2012/10/01

自分のこれまでを振り返ってみると、人生のあらゆる面で「法縁」というものがいかに深く関わってきているか、そして縁によって生じた多くの人との出会いに、いかに自分が生かされているかを改めて実感します。

開祖は縁について木に例え、「同じ種類、同じ大きさの木を植えても、その1本1本が植えられた場所、環境状況によって、日光、土壌、水、肥料など媒介物の相互作用の結果、ある木は育ち、ある木は育たない。同じようには育たない。原因に働きかけてさまざまな結果をもたらす。このような条件の相互作用を仏教では縁と呼んでいる。すべてのものは縁によって生じ、縁によって滅する相対の世界である」、そして「人生は出会いである」とおっしゃっています。

昭和22年生まれで、現在60代半ばを迎えておりますが、私にとって一番の縁は何といっても少林寺拳法との出会いです。

自分自身ここまで少林寺拳法に関わるとは思ってもいませんでしたが、今まで45年の長きにわたり、人生の大半は少林寺拳法とともに歩んできたといっても過言ではありません。

法縁の始まりは昭和42年に大学の少林寺拳法部に入ったこと、そして法縁の第二は仕事です。社会に出て2年後、当時はあまり見向きもされなかった地方公務員になることで少林寺拳法を続けられる環境を得たことです。

利益を追求する会社への就職であったら時間の制約などで恐らく少林寺拳法はやりたくても続けられなかったと、見えない縁に心から感謝しております。

昭和50年に市役所支部を開設、その後支部道場を開設し、道院と続きますが、こうした中でやはり法縁の最たるものが人との出会い、そこから生まれるつきあいです。

大学少林寺拳法部の仲間がつきあいの原点ですが、職場での少林寺拳法の仲間、道院の仲間、そして保護者、支援者などとの関わりも、いかにこうした人たちとのつきあいが自分の人生に最も大切なものになっているかは計り知れません。

この世の中、自分一人では生きてはいけず、社会の一員として生きていかなければなりません。であれば、人との出会いを大切に、そして周りの人たちを思いやる気持ち、それを表に表すことが大事です。

これが少林寺拳法の根本理念である「自他共楽」の精神です。例えば、挨拶一つにしても、自分から率先して周りの人にすれば必ず相手に通じるものなのです。向こうも必ず笑顔で挨拶を返してくれるでしょう。これが社会生活での交わりの第一歩です。

今の世の中、電車に乗れば若者のほとんどは携帯に目を落としています。歩きながら、また自転車に乗っていても同じ状況です。異常に感じるのは私だけでしょうか。

ますます自己中心の世界が広がる中で、社会生活の規範を守っていくには多くの努力が必要になります。そして、こうした社会の移り変わりをよく見つめ、認識し、常に自分を規制(自己確立)していかなければなりません。

そうした中で、われわれの願いは「天国や極楽は、あの世にあるものでなく、この世に創るべきものであり、それは神仏が創るものではなく、人間が協力して創り出さなければならないものである。人間の心の改造と平和的な手段によって地上天国を実現しようとすること」です。

多くの法縁を基に、理想境実現に向かって進むことが、少林寺拳法を学ぶものの使命にほかなりません。
(松戸相模台道院 道院長 渡来 士郎)

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