vol.23 瓦礫の後に咲いた花

2012/07/01

aun_i_vol233・11東日本大震災の翌月、宮城県南三陸町の加藤誠一宮城歌津道院道院長のお宅の片づけをお手伝いさせていただきました。そのときは想像を絶する状況に、加藤道院長にかける言葉が見つかりませんでした。

土砂まみれの中から掘り出される生活の破片。その一つ一つに何らかの感情を持って接したら何も手が出せず進まなくなるのでは……そんな恐れに似たものを、支援活動に参加した拳士皆が持っていたのかもしれません。黙々と身体を動かし続けた記憶があります。道院長が流されていた涙と、ただただ瓦礫ばかりの地。その先に広がる青く澄んだ空、そして海。その対比がやけに印象深く心に刻み込まれました。

昨年末、加藤道院長からお手紙を頂きました。お礼の言葉を丁寧に綴った便箋にある1枚の画像。あのとき、土をふるってガラスの破片を集め続けた先生宅の庭先とそこに咲く美しいコスモスの花でした。文中の「家は解体を待つばかりです」という言葉の重みを感じつつも、瓦礫のあとに花が咲き、道院長がそれを心に留め、写してくださっていることに、それだけでも行かせていただいてよかったと思えました。

ただ、花の背景にはあのとき見たままの廃虚が……私たちに日常が戻ってきていても、被災地にとって復興はまだ本当にこれからです。この震災から何を感じ、学ぶのか。そんな思いが胸に湧いた瞬間でした。
(三軒茶屋道院 小堤啓史)

一期一笑では
投稿大募集! 道場や拳士のちょっといい話を募集しています。
受付メールアドレス  aun@shorinjikempo.or.jp