生涯修行の環境づくり~自分が一番楽しんで成長すると決めてしまう~

2019/10/04

今回は、聖隷クリストファー中・高等学校英語教員兼少林寺拳法部顧問の内藤大将先生にお話を伺います。

―これまでの少林寺拳法との関わりから、自身が目指す方向と未来を担う生徒にどうなって欲しいのか、また、顧問として、どう導いていきたいのか、自身の体験を踏まえた生きた言葉、あゆみについて話していただいた。

「聖隷クリストファー中高の旗印」

――母校に変わらずある部のモットーは何でしょう。

 「何事も基本を大切に」「継続は力なり」です。肉体面では、基本・法形・運用法・演武と段階的な修練の中で、まず質の高い基本に数をかけることだと考え、実践しています。精神面では、「気」の字を部の旗印としており、さまざまなことに対する気配り・目配り(道場での心得、周囲への心遣いなど)ができるよう日頃の修練を生活に結びつけて指導しています。

「生徒との関わりから答えを導く」

――生徒との間で大切にしていることはなんでしょう。

 基本的な作法、基本以外の部内で改善すべき点は、生徒の主体性を生かした話し合いの場を設定します。

①テーマを指導陣が質問形式で設定  

        ↓

②学年別で解決策を話し合い、

 全体に報告  

        ↓

③幹部拳士が報告を基にルール作り 

 指導を行う

の流れです。15分程度の時間ですが、我々が考えたものよりも効果的で、現実的な案が出る傾向にあります。

また、希望に応じた生徒の発見力を高める学び場を設けています。例えば、県連主催の講習会や武専に連れて行くことで多くの先生方から指導を受けたり、ビデオや書籍を購入して参考にしたり、他校や大学の練習に参加させてもらったりしています。

「生徒は素直で正直だからこそ、こだわりを持つ」

 二つあります。一つ目は自分が一番楽しんで成長する、ということです。生徒が真に成長するには、努力をして成長をすることが「楽しい」と分かることが必要で、一旦そうなれば、彼らは自ら学ぶようになります。そのためには指導者の私自身が楽しんで成長する姿を見せることが大切だと思っています。だから昇段や講習に参加するのはもちろん、大会では出場可能な種目は全て出て、生徒と共に練習をします。「楽しんでいる」ことが伝わり、同じように成長を楽しむ人が一人でも増えることが私の願いです。

二つ目は少林寺拳法の本質を外さない、ということです。私は、基本・法形・運用法・演武・学科のバランスが取れた修練法をすることで、自ずと本質に近づけると考えています。

 ただし、「バランスを取る」という概念は「全て少しずつやる」とは違います。「全ての端まで触れる」意識が、本質を外さないためには大切だと思います。生徒が追求したくなったときのためにも、私自身は常に全てを深くまで修練しておくように気をつけています。

追い求める人間像

 高校の英語の先生には大きく影響を受けていると思います。彼女は「英語は勉強したい人だけがすればいい」とよくおっしゃっていました。当時は「英語の先生なのになぜそんなことを言うのだろう」と思っていましたが、授業を受けて、「誰かを助けるために必要だから知識をつける。何より世界平和のために自分には何ができるか考えて、実際に行動することが大切で、英語は道具に過ぎない」と考えておられることが分かりました。同時期に少林寺拳法部で学んだ、創始者 宗道臣の教えも相まって、現在の私の思想の根幹となっています。

 卒業して十年経った今、私は母校で同じことを生徒に伝えています。翻訳技術が向上し、既に英語は必須ではない時代です。だから私は、英語の授業を通して世界を知り、自分の世界を拡張し、誰かを助けたいと思い、そのために力をつけ、何が本当に善いのか考えて行動できる人を育てたいと思っています。

 部員の卒業時も「皆がこれまで三年若しくは六年間一生懸命頑張ってきた少林寺拳法の技は、ここにいる一人も、一生使わないと思うぞ」と言っています(笑)。

 「だからこの部で、技以外に何を学んだのか、そこをよく見てほしい。

 それだけが、これから先の人生で皆の財産になることだから」「この部で、技以外に何を学んだのか、そこをよく見てほしい。それだけが、これから先の人生で皆の財産になることだから」

 生徒に英語や少林寺拳法を教えながら、英語や少林寺拳法以外で何を生徒たちに残せるだろう、と思いながら彼らと接しています。

今後の展望

 2020年度に聖隷クリストファー小学校が開校します。学校の近くに本部活の監督である太田先生の道場があるので、小学生がそこで少林寺拳法に出会い、本中高少林寺拳法部ではもちろん、大学に行っても継続し、浜松に帰って就職をしたら、生涯修行ができるサポートをしていきたいです。

【内藤 大将氏プロフィール】

 静岡県浜松市出身

 聖隷クリストファー高等学校卒業

国際基督教大学教養学部卒業

エディンバラ大学大学院英語教育法修士課程修了、藤村女子中学・高等学校常勤講師(2015/9~2016/3)を経て、2016年4月より聖隷クリストファー中・高等学校英語教員兼少林寺拳法部顧問として勤務、現在に至る。