発達を促進する稽古づくり

2017/09/27

 
「発達障害児(者)は発達します」-
この言葉は、私が尊敬する在野の精神科医・神田橋條治先生の言葉です。
十年、二十年と長く発達障害児の成長を追っていくと、確かに発達するのです。たとえば授業中、教室の内外をあちこち動き回って多動だった子が、離席せずに座っていることができる、パニックが少なくなる、人への関心がなかった子が友達を欲しがるようになる、一緒の行動が苦手だった子が皆についていこうとする、対話が増える、感覚過敏だった子が我慢して友達と手を組んだりできるようになる。勉強どころではなかった状態の子が、勉強に目覚め高得点を取るようになる場合も少なくありません。
 「大学生の発達障害」「大人の発達障害」など言われますが、丁寧に生育歴を調べていくと、子ども時代に比べて行動がずいぶんと変化している場合があるのです。(それでも改善せずに残ってしまう障害はあるのですが)
 しかし発達するにはそれなりの条件が必要です。これまでにわかっている発達の条件を挙げてみましょう。
①子ども自身が安心して過ごせる(無理な課題を課せられたりして、人に対して恐怖心や不安感を抱かないよう)
②自己イメージをプラスに保てる(どうせ僕なんかだめだ、といった否定的な自己イメージにとり憑かれないよう)
③「できた! やれた!」という達成感をたくさん経験する。
④多くの人の愛(応援)を受ける
⑤先生の良さ、友達の良さをいっぱい体験する
⑥分かりやすい指示を受ける(わかりにくいと不安になり自信を失う)
⑦失敗を恐れず、何事も幅広く経験する‥‥などです。
 家庭でも、学校でも、こうした条件が揃い、少林寺拳法の稽古でもこれらの条件が満たされれば、発達障害の克服は可能なのです。

【執 筆 者 : 菅 野 純】 1950(昭和 25) 年 、 宮 城 県 仙 台 市 生 ま れ 。 早 稲 田 大 学 卒 業 後 、 同大 学 院 修 了 。発 達 心 理 学・臨 床 心 理 学 専 攻 。東 京 都 八 王 子 市 教 育 セ ン タ ー 教 育 相 談 員を 経 て 、早 稲 田 大 学 人 間 科 学 学 術 院 教 授 を 2015 年 3 月 ま で 務 め る 。現 在 も 、不 登 校 、い じ め 、非 行 な ど 、さ ま ざ ま な 子 供 へ の カ ウ ン セ リ ン グ に 加 え 、学 校 崩 壊 を は じ め とす る 学 校 の コ ン サ ル テ ー シ ョ ン に 取 り 組 む 。 < 心 の 基 礎 > 教 育 を 学 ぶ 会 会 長 。 著 書 は 『 武 道 ─ ─ 心 を 育 む 』( 日 本 武 道 館 出 版 ) な ど 多 数。