発達障害児への対応

2018/09/26

 もし新しく入会した子に次のような問題が見られたら、あなたは指導者としてどうしますか?  (仮に、小学五年生・男子としましょう)

・指導者に注意される子がいると、わざわざその子のそばに行き「なんだ! おまえは! やる気あるのか!」と口汚くののしる。

・自分は技をまったく出来ないにもかかわらず、大人しくてやりかえさない子に向かって「へたくそ!」などと罵ったりする

・暴言は指導者に向けられることもあり「それでも指導者か!」「指導者失格だね」などと平気で言う。

 多くの指導者は「何だろう?この子は」と驚いたり、あきれたりしながらも、その言動をたしなめ、注意することでしょう。時には叱責することもあるかもしれません。

 発達障害児の場合、いくらたしなめても、「悪かった」と認めようとせず、叱られてもケロッとしていたり、まるで他人事のように他の子とじゃれ合ったりして、さらに指導者の心を逆撫ですることもあります。そこに発達障害特有の「障害」が潜んでいるためです。

①その言葉を言うべきか否かの状況判断力の障害、

②言われた相手の人がどのような気持になるのかわからない共感性の障害、

③励ましの言葉や元気を与える言葉の未学習、など。

 近年、こうした問題を持つ発達障害の子どもへの「たしなめ方」「叱り方」「いいところを伸ばし方」などがずいぶん開発されてきました。その一つ、「チクチク(人の心を)傷つける言葉」と「あたたかく応援する言葉」を大きく書き出して道場に貼っておくのはどうでしょうか。

◎チクチク言葉「ばか!/へたくそ/死ね/むかつく‥‥」。

◎応援言葉「さすが~/いっしょにやろう/すごいなあ/ドンマイ気にしないで/いいねえ‥‥」。

 発達障害児も含めた子どもたち全員が稽古場で応援言葉を交わし合うのです。それぞれの具体的な言葉探しから始めるとより効果的でしょう。

 

【執 筆 者 : 菅 野 純】 1950(昭和 25) 年 、 宮 城 県 仙 台 市 生 ま れ 。 早 稲 田 大 学 卒 業 後 、 同大 学 院 修 了 。発 達 心 理 学・臨 床 心 理 学 専 攻 。東 京 都 八 王 子 市 教 育 セ ン タ ー 教 育 相 談 員を 経 て 、早 稲 田 大 学 人 間 科 学 学 術 院 教 授 を 2015 年 3 月 ま で 務 め る 。現 在 も 、不 登 校 、い じ め 、非 行 な ど 、さ ま ざ ま な 子 供 へ の カ ウ ン セ リ ン グ に 加 え 、学 校 崩 壊 を は じ め とす る 学 校 の コ ン サ ル テ ー シ ョ ン に 取 り 組 む 。 < 心 の 基 礎 > 教 育 を 学 ぶ 会 会 長 。 著 書 は 『 武 道 ─ ─ 心 を 育 む 』( 日 本 武 道 館 出 版 ) な ど 多 数。