第3回 普段が大事

2016/08/29

健康づくりと美容のために、定期的にフィットネスジムやスイミングクラブ等に通っている人々が随分と増えました。少林寺拳法の健康プログラムもそうした施設・教室の一つと言っても良いでしょう。ある特定の時間と場所でスポーツウエアや道衣に着替え、指導者の指示に従って活動し、それを継続することによって、健康を増進し、生活習慣病を予防し、体形を保ち、仲間を増やすことができれば、幸せなことです。

 ただし、そのプログラムや教室に実際に参加できる時間は全体の生活時間のほんの一部に過ぎません。したがって、日頃から、ストレッチング、歩く、車や階段・エスカレーター、エレベーター等に頼らずに移動することを心がける、意識して日常生活でしっかり体を使うなどの習慣づけが、大切です。「普段の暮らしが自然な訓練」なのです。

 家庭の中での朝の体操、愛犬との散歩、買い物の行き帰り、駅までの移動など、しっかり体を使うことを意識すれば、いつでもどこでも自然な訓練になります。

 指導者も、指導の時間の工夫や直前の準備だけでなく、普段の生活の中で、指導に役立つ事柄、エピソード、言葉などに敏感であることが求められます。新聞をよく読むこと、読書すること、武道・スポーツ以外の多様な分野・領域の人々と交流し、自身をいつも磨く努力を怠らないこと。その積み重ねの結果がキラリと光る指導者の姿と言葉に表れます。

「普段が大事」なのです。

執筆者:武藤芳照 学校法人 日本体育大学 日体大総合研究所所長、日本体育大学保健医療学部教授、東京大学総長顧問/名誉教授。1950(昭和25)年、愛知県生まれ。75年、名古屋大学医学部卒業。80年、名古屋大学大学院医学研究科修了。93(平成5)年、東京大学教育学部身体教育学講座教授。95年、東京大学教育学研究科身体教育学講座教授。2009年、教育学研究科長・教育学部長。11年、東京大学理事・副学長ならびに政策ビジョン研究センター教授。ロサンゼルス、ソウル、バルセロナ五輪の水泳チームドクター。日本転倒予防学会理事長。

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