第4回 元気で長生き

2015/10/26

第4回 元気で長生き

 「人間五十年、下天の内を比ぶれば、夢幻の 如くなり」は、織田信長が好んで謡いに舞ったとされる幸若舞「敦盛」の一節です。信長自身は明智光秀の謀反により自刃し、50年は生きられませんでしたが、その当時50年の寿命を全うするのは、容易ではなかったようです。
 2014年の日本人女性の平均寿命は86.83歳(世界一)、男性は80.50歳(世界三位)でした。一方、介護が必要だったり、日常生活に支障の出る病気にかかったりする期間を除き、自立して過ごせる期間「健康寿命」は、女性75.56歳、男性71.11歳でいずれも世界一でした。
 信長の時代は、寿命50年がまさしく「夢」だったのですが、今は人生80年、70歳代までは、一人ひとりが元気に過ごせる時代となりました。
 となれば、自分がしたいことを自分自身でできる「動く喜び 動ける幸せ」(一般財団法人 運動器の10年・日本協会のキャンペーン標語)を実感する日々、時間、空間、仲間が今まで以上に大切になってきました。
 少林寺拳法のコース制に参加する中高年者は、これから益々増加することでしょう。その現場では、一人ひとりの参加者が、自分のからだを自分の思うように動かせること自体が楽しい、有難い、面白いと感じてもらえるような、指導方法・内容や言葉かけが大切です。
 「ライフ イズ モーション」(アリストテレス)。生きていること(人生、生活、生命)は、動いていることなのですから。

執筆者:武藤芳照 学校法人 日本体育大学 日体大総合研究所所長、日本体育大学保健医療学部教授、東京大学名誉教授。1950(昭和25)年、愛知県生まれ。75年、名古屋大学医学部卒業。80年、名古屋大学大学院医学研究科修了。93年、東京大学教育学部身体教育学講座教授。95年、東京大学教育学研究科身体教育学講座教授。2009年、教育学研究科長・教育学部長。11年、東京大学理事・副学長ならびに政策ビジョン研究センター教授。ロサンゼルス、ソウル、バルセロナ五輪の水泳チームドクター。