第6回 お互いさま

2016/02/25

人気タレントグループのSMAPの解散騒動は、芸能界の裏面を垣間見せたという効果はあったが、何とも後味の悪い一幕でした。唯一最大の救いは、2020年パラリンピックのサポーターの立場と活動がこれで保たれたことのように思います。

 「パラリンピック」という言葉は、1964年に東京で開催された時に用いられた和製英語です。当初の「パラプレジア(脊髄損傷による下半身麻痺)+オリンピック」から、今は「パラレル+オリンピック」になり、「もう一つのオリンピック」という意味で、世界に広く使われるようになっています。

 障害のある人も障害のない人と共に、スポーツに親しむと共に、自身を鍛え全身全霊をかけて競い合う姿は、見る者を自然と感動させます。

 オリンピックの「五輪」に対して、パラリンピックを日本語の表現する漢字を公募した埼玉県戸田市の事業で、「互輪」が最優秀賞に選ばれました。小学6年と中学1年生の女の子の考案した造語ですが、パラリンピックの精神を見事に表しています。障害のある人もない人もお互いにスポーツを楽しみ、お互いに競い合い支え合い、お互いに学び合うことができるという理念が、2文字に凝縮されています。

 あらゆるスポーツや武道の指導・教育の場面でも、指導者と受講者、受講者と受講者同志が、お互いに学び合い育み合うという姿勢と配慮・工夫が大切でしょう。そのことにより、指導者の視野が広がり、受講者の参加意欲が高まることでしょう。

執筆者:武藤芳照 学校法人 日本体育大学 日体大総合研究所所長、日本体育大学保健医療学部教授、東京大学総長顧問/名誉教授。1950(昭和25)年、愛知県生まれ。75年、名古屋大学医学部卒業。80年、名古屋大学大学院医学研究科修了。93(平成5)年、東京大学教育学部身体教育学講座教授。95年、東京大学教育学研究科身体教育学講座教授。2009年、教育学研究科長・教育学部長。11年、東京大学理事・副学長ならびに政策ビジョン研究センター教授。ロサンゼルス、ソウル、バルセロナ五輪の水泳チームドクター。

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