vol.01 自転車男

2008/11/01

aun_i_vol01東京・高島平道院の少年部に所属するY君は、よくいえばものおじしないのだが、要は「態度がでかい」小学生だ。

初夏のある日、練習の後に皆でジュースなど飲んでいると、駅の高架下から声がした。

「あ、Yだ。おおい、助けてくれよぉ」
何だろう、と振り返ったときには、Y君はペットボトル片手に、既に走り出していた。

喧嘩か何かだったら、まずい。とりあえず黒帯の高校生二人に、様子を見に行かせた。

およそ1分後、Y君が戻ってきたのだが、何と友人と二人で自転車を担いでいる。「鍵、なくしちゃったんだって」

何とまあ、自転車の鍵をなくしてしまった友人のために、その子の家まで一緒に自転車を持って帰ってやるというのだ。
半ばは他人の幸せを、といつも唱えている身でありながら、さて、どれだけ実行に移せているだろうか。友達のために迷わず力を貸せる、だからこそ頼られているに違いないY君。合掌礼で見送りながら、拳士のあるべき姿を一つ教えてもらった気がしていた。
(Mrエルメス・50)

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