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  • vol.33 運命と志、そして一歩前に出る勇気

vol.33 運命と志、そして一歩前に出る勇気

2014/04/01

aun_m_vol33私が少林寺拳法に出会い、そしてこの道を歩むとき、二人の師との出会いがありました。一人の師からは少林寺拳法のすばらしさを魅了したことはもとより、その師が少林寺拳法の練習をするとき、全身からみなぎる力と気迫、勇気はここから生まれてくるのかと感じました。師からは何事にも一歩前に出る勇気ある行動を教わりました。

昨年秋、突然もう一人の師である方が窮地に立たされました。以前その師はそこに集う人たちのために、新たな殿堂を得るため、精力的に行動し、地域も行政もそして政治も動かしすばらしい活動の拠点をつくってくれました。私も師の側にいて「なんて志高く、その志を成し遂げる気持ちが強い方」と感じておりました。その目的を成し遂げるまでには順風満帆ではなく、紆余曲折がありました。「もうこのことは無理なのではないか」と思うこともありました。それでも師は自身のことでなく、皆のために何とかしたい、皆が思い切り活動ができ、皆の拠り所となる拠点、殿堂を得たいという志は、並大抵のものではありませんでした。そこに「立ちはだかる」ものあれど師は志ぶれず、機会を逃さず、ここぞというとき一歩前に出る、そんな勇気ある行動の供を私はさせていただきました。

私は8年前、突然がんを患いました。青天の霹靂でしたが、少林寺拳法を思う気持ちと後進にこのすばらしい教えと技術を伝えたい、その志を忘れず病気と闘いました。また、2年前の12月、歩行中に車に飛ばされ6メートルほど舞い上がり道路に頭から落ちました。外傷性くも膜下出血、中心性頸髄損傷、膝十字靭帯切断となり、医師より寝たきりの状態と診断されましたが、また再び少林寺拳法がしたい、その志を忘れずリハビリを行いました。現在は杖が必要ですが歩けるようになりました。医学的な判断ではありましたが、寝たきりの状態になっては何もできません。何とかしたい、再び少林寺拳法がしたい、そう思う志は捨てずに、一歩また一歩前に出ることを忘れませんでした。

ある方から「人間、ロマンがなければ何も実現できない」と言われました。またある方から、「あなたは手も足も不自由であるが、今ある手や足の前に健全であった手や足の記憶を体はしている。手の付け根、足の付け根から目に見えない手足がある、その手足を使いなさい」と言われました。運命は自分ではどうしようもありませんが、志は自らが持つことができます。その志を完結することも断念することも自らの意思であります。そしてその志に向かうことは、そのとき、その状況で一歩前に出ること、一歩前に出る勇気です。

私の師も今窮地から脱し、また新たな志を持ち一歩前に踏み出しました。

少林寺拳法の道は、今まさに一歩前に出る、そんな金剛心を持つときと思います。
(栃尾道院 道院長 伊東 一男)

道では
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