• >
  • vol.35 道院設立25年を振り返る

vol.35 道院設立25年を振り返る

2014/08/01

大学時代に始めた少林寺拳法、ここまで続けている自分を正直想像できませんでした。

始めた当初は、ひたすら強くなることを目指していました。当時の大学少林寺拳法部は、上下関係が厳しく、校内で先輩に気付かず挨拶を怠ると、連帯責任で体罰になりました。日々の練習もハードで、今思えば毎日が苦行だった気がします。その反面、同期の仲間意識は強くなり、何事も諦めない不撓不屈の精神力が、ここで培われたのかもしれません。苦しかったけれども続けてこられたのは、よき仲間に巡り会えたことと少林寺拳法の技術や考え方に魅了されたからです。

少林寺拳法のよさを一人でも多くの人に知ってほしい。地元に就職した私は、縁あって道場を開くことになりました。修行は、苦行ではなく養行でなくてはならない。損得抜きで、半ばは他人のことを本気で考えられる人を育てたい。学生時代とは違った楽しい道院を目指し、指導者の第一歩を踏み出しました。

あれから25年がたち自分を振り返ったとき、教えながら学んできたことに気付かされています。自分の成長は、自分の力だけではなく開祖が残してくれた言葉や書物、今まで出会った人から頂いた言動なくしては、成しえませんでした。

道院設立当初は、後先考えず突っ走ってきた感がありましたが、時がたつにつれ仕事のウエイトが増して、どちらの責任も重くのしかかり、中途半端になり、自分を見失いかけていた時期がありました。目の下にクマを作りながら……一度きりの自分の人生をどうしたいのか? 自問自答しながら、大げさではあるけれど私にとって人生の岐路に立っていました。ホームヘルパー2級の資格を取り、転職も考えましたが、子供たちに喜んでもらえる嬉しさ、そしてここまで一緒に頑張ってきた同志との信頼関係は、私にとっては掛けがえのないものでした。その思いが強くなったとき、「残された時間をどう生きるか」という問いに対する答えは明確になりました。

仕事のウエイトが一気に少林寺拳法に傾き、青少年育成のために残された時間を使う決心をしました。私の金剛禅の原点は、「子供たちに喜んでもらうこと」「子供たちから力をもらっていること」であり、よいことの積み重ねなのです。それがやがて平和で豊かな理想境につながると考えています。そして、いかなるときもポジティブに考えて行動し、諦めない自分でいることで、苦境になったときも一喜一憂せずに正しい道を選択できると信じています。

以前、三重武専に合田清一先生が来られたとき、講義の中で「指導者たるものは、実れば実るほど頭を垂れる稲穂にならなあかん。決して麦にならないように」というお話がありました。私には、その言葉がすごく印象的で、年齢を重ねるごとに重みが出てきます。「指導者は、その言動、身なり全てを見られている。拳士は、その背中を見て育っていく」ということです。組織機構改革で道院としての活動形態が確立し、今後はその中身が問われます。金剛禅布教者として儀式・行事はもちろんですが、布教活動と教化育成ができる場として、道院活動の充実を図ることが責務だと考えます。

最後に、本年、三重壬生野道院25周年・三重上野道院20周年を迎えることができましたのも、幹部をはじめ、お支えくださいました方々のおかげと感謝する次第です。今後ともご協力を賜りますようお願い申し上げます。
(三重壬生野道院・三重上野道院 道院長 南出 哲男)

道では
投稿大募集!受付メールアドレス  aun@shorinjikempo.or.jp