2017年夏号 会長室から〜重点課題〜

2020/01/14

2017夏号 会長室から(PDF原稿はこちらをクリック)

会長室から 〜重点課題〜   聞き手/振興普及部 大原 一純

Q 春号では、組織運営方針について伺いました。今回はまず、社会状況から見た組織の現状と重点課題についてお聞かせ下さい。

A 重点課題につながる4つについてお話をしたいと思います。

◆一つ目は、「高齢化社会への貢献」。関東4都県と愛知、福岡、沖縄は人口増ですが、都心ほど孤立・孤独化率を含む高齢化率が高いそうです。長寿科学振興財団の調査によると、高齢者の生きがいランキングは、①趣味やスポーツ、②孫や家族とのだんらん、③友人知人との食事や雑談、④旅行、⑤TV・美味しいものを食べている時、の順であり、皆さん趣味やスポーツで仲間を作って楽しんでおられるようです。都心には少林寺拳法の支部が多数ありますので、高齢者の健康寿命や孤独といった課題への貢献は、未知数にあると思います。

◆二つ目は、「若手指導者の養成」。大学生の理想の仕事は、①仲間と楽しく働ける、②自分の専門性が活かせる、③安定収入、④健康を損なわない(読売新聞調査)の順でした。これは、「人間関係や自分の専門性の活用、収入、心身の健康」といった自分の可能性に対する不安からくるのだと推測します。若手指導者の養成を考える時、①県連や近隣とうまくやっていけるか、②自分の長所が活かせるか、③必要経費等の補助があるか、④仕事上のストレスをリフレッシュでき健康でいられるか、と言うことになりますでしょうか。

◆三つめは、「人づくり」。学生に、趣味や余暇の過ごし方について聞くと、「ボランティア活動」と言う意外な答えが返ってきて驚きます。東北大震災の際、早期に組織化をし、自主的に継続的に活動を行ったのは全日本学生少林寺拳法連盟でした。また、一般の中高大学生によるボランティア団体の設立が増加傾向にあるそうです。内閣府の調査によると、社会に貢献したいと考える若者は、20代では、2006年50.6%に対し、2015年67.2%に上昇しており、現在の高校生は70%を超えているそうです。宗道臣デーも進化させたいと思います。

◆四つ目は、「真の武道としての少林寺拳法」ここ数年、日本を訪れる外国人は、礼儀、おもてなし、癒し、悟り、衣、食、アニメ、卓越した革新技術、そして武道といった日本文化に憧れています。社会的には、痴漢や、子供を標的とする犯罪が深刻な問題となっています。少林寺拳法は、礼節を重んじながら、争いを治める護身の技術として、優れた技法体系持っており、力の劣る者や女性にも役立つものです。学生大会では、防具を着用した立合評価法(乱捕りを進化させたもの)に対する技法・姿勢の両面の取り組みが進んでいます。そこで今年は、この修練法に特化した講習会を各地で展開します。

Q 春号では、組織の再生と少林寺拳法グループとの連携について伺いましたが、本年度の重点課題とはどのようにつながっているのでしょうか?

A 重点課題とは、当連盟を取り巻く様々な環境をみながら、組織使命を果たすための有効な中長期計画の着実な布石となるものです。どんな環境でも見方、考え方を変えれば、組織の存在価値を高めることは可能だと思います。重点課題の取り組みが、幸福運動の普及活動や、会員の人生に役立つものに具体的につながっているか、ここが重点課題の成否となると思います。また、どんなに素晴らしい組織理念も浄財なくしては成り立ちませんし、どんな計画や課題も単なるお題目では意味がありません。道場内や地域からの様々な支援を頂きながら努力をすると自己成長も実感でき、拳士の成長につながる様な指導者用の研修会、マニュアルの企画を行うことが急務です。さらに社会にお役立ちできる組織となるためには、時代に即した組織再生が急務であり、それは少林寺拳法グループの各法人・団体との連携や、他団体との協力関係が必要不可欠です。

Q 本年度の重点課題のポイントをお聞かせ下さい。

A 以下5点を、指導者・幹部皆さんと一緒に取り組んで参りたいと思います。

1、財政改善。C会員の予想以上の減少により、財政改善を各連盟にもご協力頂いております。今後、開祖講話集や技法DVD等を充実して参ります。記念品を含め事業課物品の積極的なご利用を全国に呼び掛けておりますので、ご支援をよろしくお願いします。

2、組織再生。学域・職域の普及を促進できる制度改善と、従来の併設支部とは異なる地域単位の、複数若手指導者による新たな団体会員制度を検討中です。指導者資格制度見直し、指導者の負担削減、会費や各種システムを併せて見直してゆきます。

3、会員の創造。継続率・復帰率・入会率向上のため、指導技術の向上、広報の改善、指導者のモチベーション向上、ハラスメントの根絶等、検討提案してまいります。

4、大会の見直し。少林寺拳法の本当の素晴らしさは、まだまだ知られていません。大会の主役は拳士をモットーに、参観者も楽しめ、地域の広報にも寄与でき、大会準備の負担感の軽減等を検討し、大会企画・運営基礎資料を提案してゆきます。

5、創始70周年。OBOGの掘り起こしと、他団体との協力関係を構築したいと思います。若手指導者の養成や拳士の継続率向上につながるイベント開催の促進などを積極的に行い、《人づくりによる国造り》を着実に促進できる環境を整えたいと思います。

―ありがとうございました。

(2017年度事業計画は、連盟本部公式ウエブサイト「少林寺拳法連盟について、財務状況、事業計画」をご参照ください)⇒https://www.shorinjikempo.or.jp/federation/about/financial