<心のエネルギー>を与える魔法の 言葉

2016/03/31

☆さまざまな背景を持つ子どもの指導 

 集団指導場面で、成績上位層に向かって投げかけていると、下位層の子どもたちが飽きてしまいザワザワし始めます。しかし下位層の子どもに焦点を当てて指導すると、こんどは上位層の子どもたちがつまらなくなり、各自バラバラなことをし始めるます。やる気のある子とない子、家庭的に恵まれている子どもと困窮している家庭の子。いま子どもたちの心の背景は「二極化」していると言えます。それ故、集団指導を行なう際、すべての子どもの心にエネルギーが行き届くはたらきかけはきわめて難しいものなのです。

 ☆どの子どもにも<心のエネルギー>を与える方法

 子どもたちの学習能力や運動能力、家庭環境の格差が大きければ大きいほど、クラス全員が同時に満足する指導は難しくなります。しかしここにひとつのヒントとなるはたらきかけがあります。紹介しましょう。

「今は、うまく出来なくとも、何度も繰り返し努力している人がいます、すばらしいです」

「全部出来れば、いいのですが、ここまで出来るだけでもすごいです」

「いま先生が注意したこと、注意されなくともすでに正しく出来ている人がいます。先生にはよくわかります」

「自分で工夫して、自分の力でどんどんやっている人がいます。もっともっと増えるかな」

 これらの言葉は小学校や中学校での実際の授業場面で先生方が何気なく言った言葉なのです。しかしこの何気ない言葉が、実は子どもたちの心にじわっとしみ込んで、いつしかクラスのどの子どもも(上位層にいる子も、下位層にいる子も)、授業に夢中になっていくのを私は目のあたりにしたのです。

 いかがですか。「先生(親)は、みんな一人ひとりが努力していること、成し遂げたことを、ちゃんと見守っているからね」と伝えるのです。子どもの指導場面でも、家庭教育場面でも、心のエネルギーの補充に役立つのではいないでしょうか。

 執筆者:菅野純 1950(昭和25)年、宮城県仙台市生まれ。早稲田大学卒業後、同大学院修了。発達心理学・臨床心理学専攻。東京都八王子市教育センター教育相談員を経て、早稲田大学人間科学学術院教授を2015年3月まで務める。現在も、不登校、いじめ、非行など、さまざまな子供へのカウンセリングに加え、学校崩壊をはじめとする学校のコンサルテーションに取り組む。<心の基礎>教育を学ぶ会会長。著書は『武道──心を育む』(日本武道館出版)など多数。