vol.33 伝え伝わる環境を作りたい

2015/05/01

 短い桜の季節は、あっという間に終わりました。入園、入学、そして入社式という、ドキドキワクワクするこの季節ですが、少子化の波は至る所にその影を落としているようです。

 私も、息子二人のときには仕事で叶わなかった幼稚園の入園式を、孫で初めて体験しました。しかし驚いたのは、入園児の少なさです。14人で1クラスだけです。少子化の深刻さは分かっていたものの、いざ目の前にすると、本当に日本の将来が不安になります。都市部の待機児童問題と、地方の極端な少子化による空きスペースが、今の日本を象徴しているようです。
 そんな中、保育園の設置や幼稚園の拡充が、「園児の声がうるさい」ということで年配者に反対されていることが話題となりました。
 中には、自分や子供たちも通った保育園や幼稚園であっても、元気に走り回る子供たちの声を騒音として苦情を申し立てるようです。夜間ならいざ知らず、こんな少子化の昨今、元気な子供たちの声は町の活気であり、未来への希望のはずだと私は思います。
 自分勝手……が横行する現代の風潮は憂うべきものだと思っていたやさき、驚く別な現状もあるという話を聞きました。それは、少子化と並ぶもう一つの社会問題である“高齢化社会”の生み出すものでした。

 認知症が発症すると、音に大変敏感になる人がいるのだというのです。かつては何でもなかった声や音に異常に敏感になり、生活に支障が出る人がいるといいます。一概に「自分勝手なわがままだ」と決めつける、簡単な問題でもなさそうです。
 核家族で、親と子のわずか20年から30年の違いでも、価値観の違いの感じ方が極端になり、分かり合おうとすることが難しい中、人に対する思いやりや労わる気持ちから生まれる「できることは協力する」という大切なことを、現代社会のどこで学び、どうやって育てるのでしょうか。大家族での生活や、所帯は別でも親子三代・四代が頻繁に行き来する交流のあった時代には、ここまでの問題とはならなかったのではないかと思ったりもします。

 祖父母から親が受け継いだもの。そして親から自分が受け継いだもの。代々伝わる大切なものは、DNAや金銭に関わる財産だけではないはずです。祖先の経験と知恵から、親を通して人としての進化を受け継いでいきたいものです。
 高齢者から子育て世代へ大切なことを伝え、若い世代から思いやりと元気を伝えていける環境を、少林寺拳法グループはつくってゆきたいと思います。