2020年夏号 Leader’s note

2020/07/03

2020夏号 Leader’s note(PDF原稿はこちらをクリック)

◆変わっていくもの 変わらないもの

◆各道場に送るエール

◆人生を切り拓く原動力 

変わっていくもの変わらないもの

2020年前半は、新型コロナウイルスの話題とともに人々の生活がありました。振り返ってみますと、この災いと向き合い過ごし方を考える中で、わずか半年ながら、世の中の価値観というものが大きく変わったように思えます。 

1970年代、宗道臣開祖は原子力に代表される近代科学の力を引き合いに、大切なのはそれらを取り扱う〝人の質〞であることを訴えられました。大きな力 は、それを取り扱う人の考え方次第で、危険な兵器にも、人々を豊かにするエネルギーにもなるのだと。そして、平和的活用は、人類全体の教育の問題であり、それを続けることで必ず平和で豊かな社会はやってくるのだと。 

このわずか半年の間に加速したオンライン化の波や新たな働き方等についても、開祖が言われた通り、それを扱う〝人の質〞が重要であると痛感します。人と人との物理的な距離が離れていく分、想像力や思いやりを持って心の距離をしっかりと縮めていかなければ、簡易さの陰で誰かが虐げられる結末が待っていないとも限 りません。 

世の中に蔓延しているのは悪いことばかりではありません。中には、自分自身 (人)の向き合い方や取り組み方を変えることで、大きな推進力に代えていける要素もあるはずです。状況を受け止め、原理原則に基づいて、自身の優位な状況に変化させることは、私たちがこれまでに修練の中で磨き上げてきた力です。開祖以来、少林寺拳法の中に受け継がれてきた、人の質によって現状(社会)を変えてゆくという精神を、今こそ「変えてはいけないもの」として再確認することが重要ではないでしょうか。 

各道場に送るエール 

3密を避ける目的から、今なお、集会形態での本部行事は実施できない状況にあります。本来であれば、段階的に支部長・監督といった第一線のリーダーに対する研修を実施している時期でしたが、 今回は「在宅研修」という形態に置き換え、月2回の資料配信をもとに、通年( 12月までを予定)で継続的な学習を行っていただくことにしました。 

支部長・監督、そしてそれに続く高段者・幹部の皆さんには、この厳しい状況にあっても幸福運動の最前線を維持し、拳士や後援者の皆さまをしっかりと牽引していただくことを切に望みます。そのために必要な学びの機会は、冒頭の在宅研修に加えて、新しい形態で届けられるように現在企画中です。 

また、オンラインを駆使し、新しい繋がりを創出して、この活動を満足に行えない状況を突破しようとされている各支部の試みは、毎日のように本部へも届い ています。各指導者もこの災禍で大変な中にもかかわらず、拳士を思い、少林寺拳法を思う〝利他の精神〞がそこに宿っていることに感銘を受けるとともに、誇りを感じています。 

私自身の体験を振り返ってみても、苦しいときや困難な状況にあるとき、「こうしてみよう」「ああしてみよう」という創意工夫が道を切り拓いていったような気 がします。そして、そこに「誰かのために」 という利他の精神があることで、応援してくれる仲間が集まり、大きな事業も成し得ることができました。 

少林寺拳法の道場には、そのようなリーダーと仲間が必ずいて、状況を突破でき る可能性を秘めていると信じています。 簡単なことばかりではありませんが、各道場における同志間の繋がりが更に強固 なものとしてこの時期に結び直されることを願っています。 

人生を切り拓く原動力 

私自身、経験したことのないこの状況下にあって、これまでに直面した危機・ 危難を乗り越えてこられた原動力は何であったかと過去を振り返っています。かつて本部道院長を務めさせていただいた時代は、老若男女を問わず、様々な拳士とふれ合い・語り合うことで、私自身も活力をもらっていたように思います。

夜遅くまで帰らぬ仲間との時間はかけがえのないものでしたが、一方で最後まで道場に残り、静まり返った空間で坐禅を組んで己を見つめる時間も、足元を見つめ直すという意味で重要な時間でありました。 また、本部には、開祖直弟子の先生方やそれに続く古参の先生方がよく帰って来られました。その先生方からは、教えと技法だけでなく、人生の貴重な体験談を多く聞かせていただき、人生のコツのようなものまで教えていただいたと思っています。 このように、やはり人生を切り拓くエネルギーというものは、自分の中にあるものだけでは足りず、人との縁によってこそ何倍にも効果を高めるものであるというのが私の実感です。

物理的には距離を取らなければなりませんが、より強く向き合ったり、より強く心を繋いだり…。心の距離を近づけ、 連帯感を高める方法にはまだまだ創意工 夫の余地があるのではないでしょうか。 そこにチャレンジすることで、〝ウィズ・ コロナ〞の時代、〝アフター・コロナ〞の 時代における少林寺拳法の姿が見えてくるように思います。