2020年秋号 LEADER’S NOTE 

2020/10/05

・如何にチャンスを見出せるか 

・教えの中に拳技あり 拳技の中に教えあり 

・時代に合った大会の在り方

如何にチャンスを見出せるか 

私は1980年、25歳のときに修行門 人として入山を許されました。 館内の整備や各種作務に追われる日々を過ごしていましたが、すぐに開祖が遷化され、少林寺拳法は大きな転機を迎えることとなりました。 その転換期の中で正式に職員となり、 後に武専本校の一期生となりました。職員としては、本部を会場に行われる各種行事を担当し、特に関わることの多かった新春行事や大学生合宿については、私なりに行事全体に見直しを行っていきました。 その見直しの一例を紹介しますと、本部に集う関係者だけで粛々と行われてい た行事を、地域住民の方々も参加できるようオープンなものへと転換していきました。二世師家の提唱された「開かれた 少林寺拳法」というメッセージを具現化 しようと取り組んだのでした。 また、大学合宿では、新たに幹部学生 だけを集めた特別合宿や、学生連盟の委 員長合宿なども企画しました。振り返っ てみますと、私の〝見直し〞の根底にあっ たのは、一人でも多くの人々が本部に集 い、楽しく過ごして欲しいという思いで あったような気がします。 そして、それらを企画・運営する仲間、 つまり本部職員についても、笑顔を絶やさず、生き甲斐を持って取り組むことが 重要だと思うようになりました。「あらゆ る事をより良いものにしていくには」… と自分に言い聞かせながら、常に新しい 発想を持てるように努め、チームの仲間 達と意見交換し、協力をしながら仕事に 取り組みました。 仕事において、いかにやり甲斐を持た せられるかということは、常に考えてき たことでした。これは、他人のことだけ でなく、自分に対してもそうであったと 思います。 そこで私が思い至ったのは、「何をした らいいのか」「何をしなければならないの か」を常に自発的に考えて仕事をする(仕 事を生み出す)ことでした。同じ仕事でも、やらされる仕事と、自ら進んでやる仕事 とではやり甲斐が違う…と確信を持って いたのです。 また、そういう自発的で積極的な姿勢 でいなければ、チャンスなんて巡ってこ ない…とも。 自ら進んでやる仕事は、苦しいことが あっても楽しいものです。楽しく仕事を していると、仲間も集まってくるもので す。仲間と真剣に取り組んでいると、大 きな困難も乗り越える方法が見つかるも のです。 これは、私が実際の経験から得た貴重な教訓です。

教えの中に拳技あり 拳技の中に教えあり

 どのような武道・スポーツでも精神修 養(メンタル)はとても重要です。少林 寺拳法の拳士として拳技を上達させるに は、教えにも精通しなければなりません。 また、それらは別々に鍛えられるもので はなく、拳技の研鑽に一生懸命取り組む 中に、精神性の向上も図られるようになっ ていくと確信しています。 少林寺拳法の拳技は、破邪顕正の拳で なければなりません。ただ強いだけでは なく、強さを上手に用いる理知と、誰も が認める正当性を持ち合わせていること。 

ただ技術力が高いだけではダメなのです。 これは、仕事にも活きることです。周 りを顧みず、ただ成果だけを追い求めて いては、誰も協力はしてくれません。仲 間との情報伝達は上手にできたか。誰も が納得できるやり方ができたか―。いざ 困った時に頼れる仲間がいるかいないか は、理知や正当性を持ち合わせながら仕 事をしてきたか…という、そこに至るま での過程(質)が問われているのだと思 うのです。 

時代に合った大会の在り方

私にとって、各種大会、世界大会や全 国大会、学生大会も深く携わってきた忘 れられない仕事の一つです。中学生拳士 や高校生拳士が増えてきたことを受けて、 創始 周年の折に全国高等学校選抜少林 寺拳法大会を、創始 周年の折に全国中 学生少林寺拳法大会を立ち上げました。 立上げにあたっては、高校・中学教員の 先生方をはじめ、多くの指導者の方々に ご協力とご支援をいただきました。 これらの大会は成果発表の場となり、 多くのクラブが一つの目標として掲げて くださっていることを頼もしく思います。 しかし、入賞を強く目指すあまり、競技 至上主義に陥ってしまっては本末転倒と 言わざるを得ません。大会という目標に 向かって、取り組む日々の修練の中に人間性を磨く場面があるということを忘れ ずに、自己を、他者を活かす拳の修行に 取り組んでほしいと思います。 また、多忙な仕事の傍ら、拳士育成に 携わっているそれぞれの先生方は、拳士 以上に熱い思いや情熱を持たれています。 拳士とともに目標を目指す日々には、様々 なドラマもあることでしょう。その場面 の一つ一つが、互いの成長の機会として 忘れがたいものになるよう、常に願って います。 

2020年は新型コロナウイルスの影響で、参加者を一堂に集めての大会を行 うことができませんでした。しかし、この環境にも適応していこうと、インター ネット経由で演武の映像を集めて審査する手法が考案され、高校三年生拳士を対象に競技と発表(フォト、ムービー)の審査が行われました。中学生に対しては、 同じくインターネット経由で全国から演武とエールを集める取り組み【全国中学 生少林寺拳法演武会2020「百万一心 〜つなげよう絆、想い、志〜」】を実施する運びとなりました。 このような状況だからこそ、「変えるべ きことは変え、次へのチャレンジを」… と改めて心に刻み、新しい繋がり、新しい表現を模索していきたいと思います。 今は離れていても、私たちは繋がって いる。その実感をカタチにしていく事業 を推進して参ります。 

川 島 一 浩 一般財団法人 少林寺拳法連盟 会長 

少林寺拳法 正範士 八段 公益財団法人日本武道館 理事 日本武道協議会 常任理事・特別顧問 青少年育成香川県民会議 顧問