vol.54 埼玉毛呂山道院 道院長 川瀬 敦士

2017/09/01

自己確立を行うなら道院長をやるのが一番
埼玉毛呂山道院 道院長 川瀬敦士

中導師、大拳士、五段 554期。
1976年9月11日生まれ。40歳
出身地:埼玉県
日本工業大学機械工学科卒業
昭和飛行機工業株式会社入社
現職:JAM東京千葉昭和飛行機労働組合 書記長(昭和飛行機工業株式会社休職中)
18歳で日本工業大学少林寺拳法部入部、卒業後、埼玉毛呂山道院(道院長:良本昭雄先生)に転籍、2008年に埼玉毛呂山道院長となる。

埼玉毛呂山道院 道院長 川瀬敦士

―――道院長になろうと思ったきっかけは何でしょうか。
先代の道院長がご実家に帰られることになり、後継者として私を選んでくださいました。尊敬する道院長から後継者として指名されたことは大変名誉なことであり心が奮い立つ思いでした。その反面、現在の仕事を続けながら道院長としてやっていけるのか、また先代の道院長のように皆をまとめ、率いていく事が出来るのか、精神的にも技術的にもまだまだ未熟である自分が諸先輩方を差し置き「先生」と呼ばれる資格があるのか等、考え始めると不安材料には事欠きませんでした。
しかしながら開祖も「自己確立を行うなら道院長をやるのが手っ取り早い」と仰られておりましたし、自らの修行になると考えました。そして何より先代の道院長、背中を押してくれる先輩や仲間たちの期待に応えたいという思いから道院を引き継ぐ決心をしました。

 
―――道院での指導方針や指導法としての工夫を教えてください。
修練では「楽しみながら技術を学ぶ」を主眼に指導しております。少年部では少林寺拳法の技術を積極的に教えるというよりは体の使い方や簡単な筋肉トレーニングなど体力や体格に合わせた修練を行っております。今まで出来なかった事が少しでもできるようになる、半年前は20回しか出来なかった拳立てが30回出来るようになるなど少しずつの成長を誉めてあげたいと思います。最近では子供たちにV字腹筋やV字背筋の時に読本を1ページ読む(読む量は年齢に合わせたものにしますが)など学科と易筋行の両得を狙った修練を行ったりしています。これは子供よりも大人の方がきついかもしれません。
大人の修練に関しては先代の道院長から「仕事を終えて疲れているのに、道場に来るのだから修練を楽しんで、明日への活力になるようにしなければいけない。きついだけでは続かないよ」と言われておりました。本当にそうだと思います。終わった後に心地よい疲労感があるように、門信徒が少林寺拳法を好きになるように心掛けています。しかし私も修行の身ですし、私も少林寺拳法を楽しみたいのです。大人の門下生には若干、私がやりたい修練に付き合ってもらっているのも事実です。


―――道院長になって出会った感動のエピソードをお聞かせください。
特別なエピソードなどはあまり持ち合わせておりません。ただ、金剛禅の道院長になった喜びは日々感じています。子供たちが道場に来て挨拶するときや私の指導についてきて一生懸命修練しているとき、大人の門下生と共に技術の研鑽を行っているときなど、何気ない道場でのやり取りが大変励みになっております。これは一門信徒として道場に来ているときよりもずっと鮮明に感じています。理由はよくわかりませんが、実は道院長である私が一番、道場に来て元気をもらっているのかもしれません。

―――道院長として今後挑戦したいことや夢などを語ってください。
一つは道院の永続的な存続です。少林寺拳法の技術、教えを広めるためにも、また今の道院を開設された先代の道院長に報いるためにも、そして私のもとで修練を続けてくれている門信徒の為にも末永い道院の存続は不可欠です。二つ目は新たなる指導者、道院長を育てていかなければならないと考えています。私の姿を見て独立したい、道院長になってみたいと思ってくれたらこれ以上の喜びはありません。少しずつでも金剛禅の教えと少林寺拳法の技術を広めていきたいと考えています。最後におまけとして、少林寺拳法連盟の活動になりますが、大会で入賞してくれたらうれしいです。道場で頑張ったこと、一生懸命修練した成果が大会入賞として認められたら大人も子供も喜んでくれると思います。そんな経験を味わわせてあげたいと思います。


―――個人として(一社会人として)頑張っていることや、目指していることがあれば 聞かせください。
道場以外では私も一社会人であり、企業に勤めるサラリーマンです。ストレス社会と言われている現代で様々な壁に当たることも多々あります。今の職場は私が「少林寺拳法の道院長」という立場にあることに理解を示してくださり、大変感謝しておりますが、それでも難しい時があります。サラリーマンとしての自分、道院長としての自分、プライベートでの自分をきちんと区切ることが必要であると考えています。そのうえで根幹となる自己は「少林寺拳法の拳士である」という拠り所を持つことだと考えています。それぞれの立場でも恥ずかしくない自己を持てるように頑張って行きたいと思います。

―――仕事や家庭(子育て)についてどの様に両立させてますか。
私は道院長になってから直ぐに仕事の都合で3年ほど岡山に行くことになりました。道院は埼玉ですから、とても毎回通える距離ではありません。道場も専有道場にしたばかりで困っておりましたが、道場の方たちは快く送り出してくれました。特に大学時代からともに修練を続けてきた後輩(当時の副道院長、現在は休眠中)には、不在時にはよく代行をしてもらい、とても苦労を掛けました。大変感謝しております。
私個人としては未熟なため、仕事と道場の両立を十分に出来ているとは言えません。ただ頼りになる後輩や門信徒に恵まれたと思っております。

―――最後に将来、道院長を目指す全国の拳士へ、一言エールをお願いします。
私は初めから道院長を目指していた訳ではありません。正直に言えば道院長という重責に怖気づいていました。自分に出来るはずはないと思っていました。そんな私でも多くの仲間のサポートを受けてなんとか道院長をやれています。
もし道院長をやれる機会がまわってきたら、そのチャンスを逃さないでください。機会が来るときは突然で、十分に準備が出来ていないかもしれません。でも大丈夫です。多くの先生や先輩、仲間がきっと支えてくれます。ともに金剛禅運動に邁進していきましょう。