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vol.46 心打たれた『本物の拳士』

2016/06/07

 昨年、九月十一日の朝、「先生、道場が浸水し、太鼓や冷蔵庫が浮いています。」と連絡があった。台風十八号の大雨により鬼怒川が氾濫し常総市が未曾有の被害を受け、多くの家屋が流され、浸水した。
 この非常事態の中、際立った行動で地域に貢献した拳士とその子供達がいる。彼らは今回の浸水で幸い被害が無かったが、復興のために家業の洋ラン栽培の仕事を一時中断し、断水して泥の撤去に困っている市民に栽培用の水を提供することを決意。配水場所はSNSで知らせ、トラックで毎日運び、水道が復旧するまで続けた。他にも高圧洗浄機で泥を洗い流す少林寺拳法ボランティアチームとも連携し、放置された山積みのゴミの撤去、停電で真っ暗な街を毎晩深夜パトロールして治安維持にも努めた。
 その拳士は山野井喜仁。私が今から四十三年前に教師として旧水海道市(現常総市)に赴任し、数年後道院を設立したときに入門してきた拳士である。彼の父親(故山野井瑛氏)も開祖の志・『半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せ』に共感し、道院設立当初から長年後援会長として支援をいただいていた。喜仁氏も息子三人を入門させ、孫達も祖父と父親の志を繋いでいる。
 私には今回の災害でボランティア活動している喜仁氏に父親(故山野井瑛氏)の生き方が重なって見えた。また正義感、優しさ、行動力を備えた人間性にあふれる『本物の拳士』の心が三代に渡り受け継がれてる姿に胸が熱くなった。
(水海道道院 鈴木 裕)

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