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vol.21 八正道の実践について自らをふり返る

2016/12/01

osawa

合 掌
 師走に入りました。皆様におかれましては如何おすごしでしょうか。
 昨今、改めて思い返すと、私たちは時を重ね、年を積み重ねつつ人生がつくられていきます。さらに多くのものが関わり、重なり社会が形成されています。より良い社会を望むならば、私たち一人ひとりの人生が良いもの、つまり良い時間を積み重ねてゆかねばなりません。
 先日ある県教区講習会にて釈尊の正しい教えのお話をしてきました。釈尊が悟りをえて最初に行った説法である初転法輪の四諦(したい)にある道諦(どうたい)の八つの正しい実践を、生活、修練の中に活かせているのか。活かし切れていないとすれば、もう一度心を正しく見つめることからはじめましょう。そうすることで心や行いに偏りがない生き方を得ることが出来るのではないでしょうかと・・・。
 さて、仏教は迷信ではなく正信です。生きている人に対し、どう生きるかの教えであり実践を説いています。生きている人間が自分自身を見つめ、苦の原因を知り、その解決のためにどのように生きるべきかを教えてくれます。人の苦は快楽追求では消すことは出来ず、また苦行難行を通して消すことも出来ません。
 一所懸命に自分を高め、他を幸福にしようとする思いと行動が出発点です。それが他に響き、波紋のように広がっていきます。その波紋は多くの人に影響を与え、影響を受けた人からも新たな波紋が発生します。自ら発した波はやがて我に返り、更に大きな幸福の波となって広がってゆくのです。
 私たちは釈尊の正しい教え、つまり金剛禅の教えを、時代が変わろうとも活かしていかなければなりません。その道しるべは「八正道」であり、金剛禅では教義、教典、教範を通じて「教え」として深く理解し、実践できる「行法」が備わっております。子どもから高齢者に至るまで金剛禅の教えと行法で、豊かな人生を歩んでいくことを願っております。

 「すすんで善行をしましよう。誰も見ていなくても、宇宙の大いなる働き(ダーマ)と自分の心は見ている。正しい実践は、相応の正しい結果につながるのですから。」

 皆様、今年も残すところ僅かではございますが、自分自身を振り返り、より良き人生に踏み出すことを願っております。良き新年をお迎えください。

合掌再拝

【語句説明】
八つの正しい実践八正道
◇正見(しょうけん)ありのままにものごとの本質を見つめる
◇正思(しょうし)世のため人のために何が善か正しい判断、決断する
◇正語(しょうご)真理を伝える
◇正業(しょうごう)他人に迷惑をかけず人を助ける
◇正命(しょうみょう)職業を通じて奉仕する
◇正精進(しょうしょうじん)生活すべてに弛まず励む
◇正念(しょうねん)奉仕する喜びを知る
◇正定(しょうじょう)一刻、一刻を大切にし、全精神を集中する
この実践が自己を生かし、他人をも生かす「自己確立」と「自他共楽」の生き方なのです。