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vol.25 なくてはならない一人 “一人の変化が全体を変える可能性をもっている”

2017/04/01

osawa

合 掌
 皆様、新年度もよろしくお願いいたします。
 4月になりました。桃陵公園の桜の開花は例年より少し遅いようです。まだ蕾の先が桃色に色づいている状況ですが、数日後には見事な花を咲かせてくれると期待しております。
 さて、あるテレビ番組で備長炭づくりを紹介しているのを見て、感じるところがありました。炭作りをしている人が、長い年月の経験をもとに魂を込めて作っておりました。適切な木を選定し、釜に火を入れ、温度管理、空気を制御して炭化させる。そうして最良の炭が出来上がります。良い炭は安定した火力を長く保ち、料理を美味しくします。美味しい料理は食べる人を笑顔にします。料理を切る包丁も作る時に炭が必要です。包丁と同じように作られた鉈(なた)で山は維持管理されます。炭ひとつ取り上げても山と炭と料理の繋がりの中で複雑に関係しあっていることがわかります。さらには材料となる木も豊かな山だからこそ良いものが得られます。落ち葉が腐葉土になり良い土となる。土が良いから水が綺麗になる。そうして山の豊かさが保たれ、動物や私達人間に恵みを与える。身の周りの全ては繋がり、循環し、影響を与え合っています。
 私達人間も一人一人の存在は小さなものかもしれませんが、周囲の人と繋がり、社会と繋がり、自然とも繋がっていて、そして大きな関係性の中で存在する意義があり、役目を果たしているのです。一人の思いと行動には、大きな力になる可能性があるのです。
 この真理を理解できたなら、誰かが良くしてくれるのを待つのではなく、自らがより良い考えを持ち、良いことを実行しなければいけません。大いなる繋がりの中で影響を与え「周囲や全体を良くし多くの人を幸福にする。さらに周囲が幸福になれば自分も幸福になる。」と思いませんか。
 私たち金剛禅総本山少林寺はこのようなことを実践できる人をつくり、社会を良くする運動をすすめております。その地域の拠点が道院です。是非お近くの道院にお越しいただき、社会を良くしようとする日々の頑張りとその大きな可能性を御覧ください。
合掌再拝