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vol.52 一度しかない人生を豊かに

2019/07/01

osawa

合掌
 7月に入りました。日ごとに暑さが増し、家庭や職場でも気温が高い地域では冷房を使い始めている頃ではないでしょうか。
 私達は気温の変化をコントロールすることはできませんが、人間の体はある程度、気温の変化に適応するようにできています。それは自らがそうしようと意図したわけではなく、生まれついて備わっている能力であり、人間が持っている生命力の1つでもあります。金剛禅の修行は生来の生命力を引きだすようになっています。
 金剛禅の修行では、肉体を整えていきますが、同時に精神も整えていっていることに特徴があります。一流と呼ばれるスポーツ選手が技術を高めていく先に壁にぶつかり、ある時期から精神、心の部分に目を向けるようになるという話をよく聞きますが、私達は入門当初から肉体と精神の両方を高める修行を行っています。技術力が高まる前から、もっと言えば子どもであっても高齢者であっても、体と心の両方に目を向けて修練を行っています。なぜそうするのかと言えば、人は身心一如の存在であり、体と心の両方が調和することが生きる上で重要だと考えているからです。
 社会に目を向けますと、私達の肉体や頭脳の延長線上にあるツールの発展には目覚ましいものがあります。自動車、新幹線などの移動手段、スーパーコンピューターによる大容量の演算、AIの進歩、そしてまもなく5Gの時代が到来します。このように現代社会において、私達の生活を便利にするツールはたくさんあります。しかし、ツールの発達と比較して、それらを動かす私達の心はどれだけ成長しているでしょうか。文明の発達に私達の心はどれだけついていけているのでしょうか。
 ナイフで例えると、料理することで人を幸せにすることもあれば、凶器となって人を悲しませることがあるように、世の中にあふれる便利なツールは、使う人の考え方によって人を幸福にも不幸にもします。要するに使う人の心次第なのです。
 世の中をよくするためにも、今一度、私達は心の部分に目を向ける必要があるのではないでしょうか。人としての生き方がより一層問われる時代になっています。幸いにも開祖は現代を生きる上では欠かせない教えをたくさん残してくださっています。最低限、教典に書いてあることだけでも日々実践し、人としての生き方を身に付け、一度しかない人生を豊かにしていきませんか。
 これからさらに暑さも厳しくなってまいりますが、適度に水分を補給する、打ち水をする、風通しをよくする、日光を遮って効果的に冷房を使うなどして、賢く暑さを乗り切り、有意義な夏をお過ごしいただきたいと思います。
合掌再拝