Vol.84 あきらめる

2022/03/01

osawa

合掌
 3月に入りました。まもなく2021年度が終わります。新たな年度を迎えるにあたり、今月は「あきらめる」ということを意識して取り組んでみてはいかがでしょうか。
 あきらめるとは、断念する、途中で放り出してしまうなど、どちらかというとネガティブな意味合いで使われることの多い言葉ですが、もとは仏教用語で、「物事の真理や真実を明らかにする」というところから来ています。迷う心があった時に、その迷いがどこからきているのか、真実を明らかにして執着を手放すとき、目の前にある霧が晴れ、自分が今何をなすべきかがはっきりしてきます。このように「諦め=あきらめ」とは、物事をプラスに転じさせる作用を持っています。
 人生は選択の連続とも言われます。その選択がうまくいくかどうかは、その過程において、真理を明らかにしたかどうかです。明らかにしないまま、強引にやり通そうとすれば、無理な力が加わり、失敗や後悔が待ち受けています。逆に智慧の目を持って明らかにし、真実や真理を見ることができるようになれば、迷うことなくまっすぐに進むことができ、幸せや成功に近づくことができます。
 金剛禅の修行、あるいは学業や仕事でも結構です。何のために自分はそれに取り組んでいるのか、自分に本当に必要なことは何なのか、明らかにしてみてください。目的がはっきりしないまま進めば、うまくいかない時に、都合の良い理由をつけて放棄する「あきらめ」をしてしまいます。修行目的、働く意味、学ぶ意味、これらを明らかにできれば、今は何をなすべきか、どのように人間関係を築けばよいのか、将来に向かってどのような種蒔きをすればよいのかが自ずと見えてきます。たとえ困難なことが立ちふさがってもそれを乗り越え、失敗してもすぐに立ち直ることができる力が心の内側から湧いてきます。これが私たちの中にあるダーマの霊性を発現させることにもつながります。
 春はもうすぐそこです。新年度、あなたはどのような芽を出したいですか。そのために今月は意識して「あきらめる」ことに取り組んでいきませんか。目の前にある迷いを振り払い、春の暖かい陽光のように晴れやかな気持ちで、自分の可能性を信じて進んでいきましょう。
合掌再拝