第3回目 ライフスタイル [家族を考える]

2019/01/30

〇家族の形

昭和64年1月7日生まれが30歳となったのを最後に、昭和生まれの20代が消え、平成生まれが30歳へと突入し始めた2019年1月。日本の統計では、初婚の平均数値は30歳前後であり、平成世代のパパ・ママに新元号ベビーが誕生する時代に移り変わっていく……。

生涯未婚率も上がり、未婚や高齢者の単身世帯が増加し超“ソロ”社会化している。一方、家族の形も時代とともに変わり、核家族が当たり前の今では、サザエさん一家やちびまる子ちゃん一家のような非核家族はまれになっている。
図表の統計を見るかぎり、共働き世帯数は、近年では、2011年に下がって以降は増加している。女性活躍社会を促進し、深刻な働き手不足を女性で補うという社会需要の高まりや経済的な事情から共働き夫婦が増加し続けている。
大黒柱一本体制から夫婦二本体制というリスク分散を各家庭が選択しているとも考えられ、背景には、年金への不安、老後への備え、事故・災害など不測の事態がいつ起きるかも分からない昨今、何事にも保険を掛けておきたいという意識変容があるのではないだろうか。

共働き夫婦の経済的メリットは大きく専業主婦と働く妻では、生涯収入に1億円ほどの差があるともいわれている。また、夫婦共働きで、子どもはあえてもうけないDINKS(*1)を選択する若い世代もいる。
*1DINKs(ディンクス)とは、共働きで子どもを意識的に作らない、持たない夫婦。Double Income No Kids(2収入、子どもなし)の頭文字などを並べたもの。意識的に子どもを作らない、持たないという考え方や価値観を指すため、結婚してまだ日が浅く子どもがいない夫婦や、何らかの事情により子どもを持つことができない夫婦などは通常、DINKsには含めない。

〇男女の役割意識のアップデート

2019年10月1日より、消費税が現在の8%から10%へと2%引き上げられ、これを財源として、3歳から5歳児は原則全世帯、0歳から2歳児は住民税非課税の低所得世帯を対象に幼児教育・保育無償化が施行される。

「一億総活躍社会」「女性の輝く社会づくり」をスローガンとする政府の目玉政策であるが、今後の日本の家族の形にも影響を与える一つになりそうだ。
旧来の男女の役割意識や固定観念がアップデートされれば、産休や育休、一時退職しても、家庭と社会との敷居を抵抗感なく行き来できるような環境改善が進むと考えられる。
例えば、男女関係なく家事や育児を担うことや、専業主婦(夫)を望む女性(男性)に対する理解が深まること。夫婦の個別の特性や状況(収入など)に応じ、各家庭で話し合い役割を分担すること。こうして多様な家族形成が当たり前の社会となっていくだろう。

〇育児における夫婦の課題

男性の育児休暇取得や時短勤務なども徐々に増え始めているが、核家族では、母親一人で子どもの面倒を見るケースが多い。特に0歳の乳児期は、昼夜を問わず、オムツ交換・授乳・寝かしつけを行うワンオペ育児(*2)で、まとまった睡眠もとれないなどの心身への負担や社会とのつながりも家に籠もることで薄くなりやすく、精神的なストレスは想像以上に大きい。
*2ワンオペ育児とは、ワンオペレーション育児の略で、何らかの理由により一人で家事、育児をこなす状態を指す。「ワンオペ」とは、コンビニや飲食店で行われていた一人勤務のこと。

また、厚生労働省の調査(*3)によると、母子家庭の35.1%が「子どもが0~2歳までの間」に離婚しており、次いで「3~5歳までの間」が多いなど、子どもが小さいときほど離婚率が高くなる傾向が判明している。そんな中、NHKの情報番組で“産後クライシス”なる造語が生まれ、「産後2年以内に夫婦間
の愛情が著しく冷めてしまう現象」と定義されている。
*3「平成23年度 全国母子世帯等調査結果報告」

本来、新しい生命の誕生は喜びに満ちるものであるが、同時に心身への負担も大きなものになっていく。この時期は、お互いが思い描く人生プランや、家事・育児・仕事への考え方など、違いが顕著に表れやすい。「どうせ言っても意味がない」「自分さえ我慢すれば……」と気持ちを伝えることをせず、互いの精神的ケアもなされず、「対話の不足」から最悪の事態を迎えるケースがある。

産前産後の女性は、ホルモンバランスの急変、慢性的睡眠不足から感情が不安定になりやすい。それに対して、男性は、論理的な解決策を求める傾向があると言われている。コミュニケーションに求めるもののちがいから、互いに歩み寄るつもりが、かえってミゾが深まってしまうことがある。
対話では、まず相手の気持ちに寄り添うことで共感を示し、その先に解決策を見出すことが大切ではないだろうか。もともと別々の人生を歩んだ二人が、「夫婦だから」という理由だけで、すべてを理解し合えるなどと思わず、対話をしながら、成熟への道を共に歩んでいると前向きに捉えようとすることが一つの糸口なのかもしれない。