第1回目 2025年問題を知る

2018/11/29

もうすぐ平成が終わる。

2019年4月30日に今上天皇が退位し、2019年5月1日からは新しい元号の下、新たな時代が始まる。本コラムは、SHORINJI KEMPO UNITY広報セクションのスタッフが、テーマに基づいてさまざま談義した結果をまとめたものである。平成最後の半年間に、6回にわたって、月1回配信予定。

このコラムの発端は、少林寺拳法はシニアと女性に対してアピールが足りていないのでは?という問題意識から始まった。
そのために、まずは社会全体に何が起きているのかを見渡してみよう、そして問題点を探っていこうとなった。

●少子高齢社会ってどんな社会?

2020年には、女性の半分は、50才以上となり、
日本は世界に名だたる(?)マダム大国となる。
どういうことなのかというと。

出典:厚生労働省:平成29年(2017年)人口動態統計月報年計(概数)の概況

現在(2017年)の出生率は、1.43。出生人数は、946,060人。
出生率が最も低い2005年は、1.26。でも出生人数は、1,062,530人。

子育て支援施策などの成果もあってか、出生率は、向上したが、そもそも母数となる母親の人口が減少しているのだ。

※合計特殊出生率は、一人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに産む子供の数の平均を示し、この指標によって、異なる時代、異なる集団間の出生による人口の自然増減を比較・評価することができる。

そして、2025年の日本は、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が 75歳以上という、人類が経験したことのない『超少子高齢社会』を迎えることになる。

そもそも少子高齢化とは、少子化と高齢化という二つの社会現象が同時に起こっている状態のことである。

・少子化:出生率が減少して、生まれてくる子供の数が減少すること。
・高齢化:平均寿命が延びて、高齢者の割合が高まること。

まずは少子化の影響を考えてみると概ね次のようになる。

経済面では、人口の減少によって生産性、および労働力が低下する。
そして人口の減少による労働力の低下は経済成長を大きく妨げるのはもちろんのこと生活水準への影響を及ぼす。
「子供を生むとお金がかかる」、そういったイメージにより単身者や子供のいない世帯が増加し、少子化がますます加速する。

そして、日本の家族の形も大きく変化し多様化するものと思われる。

次に高齢化の影響を考えてみる。
高齢化によって必ず起きる社会保障費の負担が国民の生活水準に大きな影響をおよぼす。また、高齢者がますます増えて若い世代の人がどんどん減っていくと介護職の不足という問題が発生する。

●少子高齢社会をポジティブに考える

いま、AIやロボットなどの最新テクノロジーによる労働力の補充や、定年引き上げ・女性が活躍しやすい労働環境の改善・外国人労働力の活用で、生産力労働力をカバーするという具体的な対応策が国も含めて様々な分野で検討されている。

さらに、平均寿命と健康寿命の差=要介護期間を短くし、医療・介護の負担を軽減すること、高齢者の健康予防に対する意識を高めること、高齢者が社会や他者との交流を持ち続けられ孤立を防止する取り組みが活発になっている。

この時勢をポジティブに捉え「人々が便利で、より幸せに長生きできる時代」へ移行するチャンスと考えてみたい。

高齢者が多いということは、退職して時間もあって、人生経験豊富な方々があふれているということであり、あらためて日本の文化や価値観を再構築できるチャンスともいえないだろうか。高齢者の活躍ありきの社会システムに移行し、子育てを地域ぐるみで行うなど、少子化を克服するための子供にやさしい地域社会を創っていくことも可能だと考える。

また、『超高齢社会』=『超多死社会』でもあり、死という存在が身近になることから自身の終活・親世代の死に直面することであらためて日本人の死生観を含めた精神世界も変化していくのではないだろうか。このことは決してマイナス面ばかりではないと思う。

そこで、その時代の変化に合わせて、その社会で人々が求めるもの、次の時代に価値あるものとは何なのか……。次回以降、可能性も含めてあれこれ考えていきたい。