第2回目 ライフスタイル[シニアを考える]

2018/12/26

このコラムのおさらいとして、第1回目は、「2025年問題について知る」がテーマだった。日本の社会状況を人口の統計から整理し、時代の変化に合わせて、その社会で人々が求めるもの、価値あるものとは何なのか、と締めくくった。

今回は、時代や社会が反映される「ライフスタイル(*1)」がテーマである。

*1 ライフスタイル(lifestyle):生活の様式・営み方。また、人生観・価値観・習慣などを含めた個人の生き方。

〇「命の寿命」と「健康の寿命」

日本人の平均寿命は、男性80.21歳(71.19歳)女性86.61歳(74.21歳)( )内は、健康寿命である。
健康寿命とは、健康で日常生活を送れる期間。平均寿命と健康寿命の差は、男性約9年、女性は約12年の差がある。これは、支援や介護を必要とする期間が約9~12年あることを意味している。この要介護期間を短くし、ピンピンコロリの生き方(逝き方)を目指そうというスローガンも生まれている。

【平均寿命と健康寿命の推移】

(出典:「平成28年厚生労働白書-人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える」)

〇予防習慣をライフスタイルに

・フレイル予防

フレイルとは、加齢によって認知機能や運動機能、活力などが相互的に、徐々に低下していく状態を指す。高齢者が要介護状態になるまでには、このフレイルの状態を経るケースが多く、要介護となる前の予防期間として重要視されている。 
フレイル改善のためには、脳のトレーニングで認知機能の低下を防ぐ、運動習慣をつける、食生活の改善、趣味や社会活動に積極的に取り組んで気力を養うなど、生活習慣の見直しが必要となる。

運動
ウォーキングなどの有酸素運動は、持続的に筋肉を動かし、呼吸することによって、酸素を取り込み、全身の血行を促進することができ、脳への 血流が増加し、脳を若く保つ効果がある。さらに、効果を高めるには、運動に加えて、計算やしりとりするなど、二つのことを同時に行って、脳への適度な刺激 を与えることで、より高い 認知症予防の効果が期待できる。

食事

食事は、栄養バランスを考えて、偏らせないことを意識することが大切で、野菜や果物からのビタミンや魚のDHAは脳にもよく、赤ワインなどに含まれるポリフェノールは、抗酸化作用が強く、活性酸素などの有害物質を無害な物質に変える作用があり、動脈硬化など生活習慣病の予防に役立つとされている。また、咀嚼(そしゃく)運動は、あごを使い、脳を活性化。よく噛むには、適度に硬い食べ物も必要であり、そのためには健康な歯の維持が大切で、口腔ケアは怠らないことが肝要である。

認知トレーニング
認知症では、記憶力だけでなく集中力や計算力にも障がいが起きる。
認知トレーニングといっても遊び感覚でできるものも多く、楽しんで脳に刺激を与えることで継続も苦にならない。手先を使うような折り紙から、麻雀、トランプゲーム、将棋やオセロのボードゲーム、計算や日記、他人との会話だけでも認知トレーニングになる。

〇シニアのための居場所づくり

学生は学校へ、社会人は職場へというように、決まって通う場所があるうちは、人間関係に事欠かないし、むしろ、人が集まると摩擦も含め有象無象のエネルギーが発生する。そうした中で、さまざまな選択と可能性がある生活は、刺激もあるだろう。

しかし、定年を迎え、通う場所も、趣味 もないとなると、仲間や話し相手も少なくなっていくことが多い。そうした身の回りの社会(人間関係の変化)は、身体面・精神面にも影響を与える。気軽な助 けを求める相手が身近にも少ない、引きこもり、その果ての孤独死などは、できるなら防ぎたい。

いつまでも、よき人間関係に囲まれて過ごすことは、すばらしい価値あることである。いつまでも誰かの役に立ちたい、関わり合いを持っていたい。人間とはそういうものではないだろうか。

「社会参加」は、「運動や食事の改善」 と同様に、健康寿命を伸ばすためにも有用な活動であり、高齢者だけでなく、働く世代も含めて、地域社会に関与する場は貴重である。「情けは人のためなら ず」。社会に貢献する活動は、まさに自分の人生に生きがいをもたらす自分のための実践活動であるのだ。

家族をはじめ、身近な地域のコミュニティーを中心とした居場所づくりなど、人間関係の豊かさこそ、日頃より積み重ねる価値が大いにあるのではないだろうか。
【高齢者の自主的社会活動への参加状況】

(出展:「平成28年厚生労働白書-人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える」)