第3回 私の使命、私の願い

2019/09/30

なぜ「片腕一本でできるまったく腰に負担のかからない介護技術」を公開したのか―。
行政講座でお逢いした高齢のご夫婦。このご夫婦をモデルとして講座を進めた結果……私の使命はこれだと確信した。


目から大粒の涙
 私は行政講座担当の方に今日はこのご夫婦をモデルに講座を進めて構わないか確認しました。行政講座担当の方は、家族の承諾を得られれば、構わないとのことでしたので、そのご夫婦をモデルに講座を進めさせていただきました。
その結果、この女性は体格のよい旦那さんを軽々と抱き起し、また立ち上がらせることができるようになりました。そして、今までかなりの負担を強いられてきた車いすへの移乗は、楽々と移乗させることができました。「こんなに軽くできるなんて信じられない!!」その女性は、目から大粒の涙を流していました。

私の使命だと決意した瞬間
 講座が終了すると、その女性は一枚の紙を私に見せました。なんとその紙は老人ホームの入所申し込みでした。
「今日のこの講座が私たち夫婦にとって最後にすがる講座でした。もしここで、介助ができるようにならなければ、そのまま老人ホームへ行くつもりでいました。これで主人を老人ホームへ入所させず最後まで一緒に暮らしていける希望が持てました」とその女性は泣きながら何度も何度もありがとうと私の手を握り締めていました。
これが、私たち家族が生きていくための術(すべ)として編み出した「片腕一本でできるまったく腰に負担のかからない介護」を世の中に公開していこうと決心した瞬間でした。また『一度は貰った命、この命を世の中に恩返ししていこう』と心に決めた、私の人生の使命とした瞬間でもありました。

私の願い
 今現在、介護現場はパワー介護(チカラ任せの介護)が主流です。私の学院で教えている介護職員初任者研修の演習においてすら、パワー介護の内容を教えているのが実情です。実際、介護現場で働く方たちは長年腰痛に悩まされ、離職せざるえない状況になったり、せっかく老人福祉施設に就業しても数年で腰痛を発症したりしています。
 私たち家族が編み出した「片腕一本でできるまったく腰に負担のかからない介護技術」で介護に携わる方たちの腰痛が改善され、チカラを入れずに楽に介護ができるようになれば、もっと楽しく介護ができます。そして何より、介護を必要としている方々の負担を和らげ、毎日を明るく健やかに過ごす助けとなると私は信じています。
この「片腕一本でできるまったく腰に負担のかからない介護技術」を世に拡げることが私の大きな役目であり、使命であると思っています。
今後も介護に苦しむ方たちの一助の光であることを心から願い、日本全国にこの輪を拡げてまいりたいと思います。

次回予告!
次回は、当コラムを執筆してくださっております根津 良幸先生と一般財団法人 少林寺拳法連盟 川島 一浩会長による対談を掲載する予定です。
詳しい内容は「乞うご期待!」ということになりますが、笑いあり、涙ありの楽しい対談をお届けいたします。

一足先に、テーマの一つでもある「介護技術特別講習会」についてお知らせいたします。
シャイニングフェスタと同日開催でもある「介護技術特別講習会」は、10月19日(土)・20日(日)に、根津 良幸先生を特別ゲストとしてお招きし、ここ香川県多度津町の本山にて開催いたします。
根津 良幸先生に直接ご指導いただける、またとない機会となっておりますので、是非ご参加ください!!

根津良幸氏プロフィール
1996年に社会福祉法人を設立。特別養護老人ホーム統括施設長、デイサービスセンター長、グループホーム統括施設長に就任する。
また、介護認定審査会委員、老人福祉施設連絡協議会会長、高齢者虐待防止委員会委員を歴任。現在、株式会社 One to One 福祉教育学院 代表取締役として活動しながら埼玉医科大学の客員教授として講義・指導を行う。
そして、自身が脳梗塞に倒れ、2年間で要介護5〜要支援1の7段階を体験し、介護・リハビリ生活を送った中から自分たち家族が生きるための術(すべ) として家族のために編み出した「片腕一本でできるまったく腰に負担のかからない介護テクニック」を腰痛で悩む介護現場職員や介護を必要とする家族のためにこの術を公開し始め、年間 5,000名を超える日本一受けたい講座の講師として活躍中である。
また、埼玉医科大学において1・2年生の必修科目として「【地域・介護医療】地域医療と介護の連携」、「【ラポール形成】患者・家族・医師との信頼関係」や3年生の必須科目「行動科学と医療倫理」の講義や埼玉医科大学国際医療センターにて新任ドクターに対してコミュニケーションの講義・指導を行っている。