vol.42 熊本・大分地方の震災に際して少林寺拳法が伝えたいこと

2016/04/29

熊本県を震源とした震度7という大震災が起こりました。被災地域の皆様に心からお見舞いを申し上げます。

地殻変動によるストレスがプレートに溜まり、活動期に入ったといわれる日本では、阪神・淡路大震災、中越地震、そして東日本大震災と大地震に対する恐怖と緊張感、そして警戒感が薄れ始めるころに大地震が起こってきました。今回も、まさか九州で……と、誰もが思ったのではないでしょうか。 首都直下型や南海プレート地震が警戒されていただけに、九州地域では耐震補強や防災グッズなど、東海や関東ほどの危機感を持って準備する人は少なかったかもしれません。

建物の倒壊や土砂崩れでたくさんの方々がお亡くなりになったり、一週間たった今もまだ行方不明で捜索も難航しているようです。橋の崩落現場では、二次災害の恐れから、なかなか捜索も進まない状況のようです。ご家族の気持ちを考えると、居たたまれなくなります。

そんな中、小学生の子供たちが、避難所で自発的に自分たちにできることをしようと、話しかけながら高齢者の肩を揉んだり叩いたりしている映像が流れました。高齢者の中には、子供たちに励まされ、うれしくて涙を流している人もいました。また、倒壊した家の中に人がいると、友人が救急隊に通報し、早期に救出され無事だった夫婦。探しに来た長男が、人のつながりに助けられたと、その父親の友人に抱きついて泣いていました。避難所でも車中避難している人も、近所の知り合いが何人もいるので心強いといいます。ふだんは他人に干渉するのもされるのも嫌いだという若者も、「人のつながり」を心強く感じているようです。

東日本大震災でもいわれた「絆」。平時にはあまり意識をしない他人(ひと)や地域のつながり。それは、都市圏では難しく、災害に備えて強化しようと地域ごとにさまざまな取り組みが行われますが、生活形態やプライバシーを守りたいという意識が強く、なかなか容易ではありません。ふだんの関係がまったくないどころか、集合住宅ではネームプレートも表示してはいけないという規則のあるところもあり、名前すら分からないというありさまです。何人住んでいるのか家族構成はもちろん分かりませんから、何かあっても警察以外知りようがありません。職場での人間関係も、できるかぎり浅く、プライベートに関する干渉はしてほしくないし、他人にもしたくないという人が増えているといいます。

地域とのつながり、職場でのつながり、友人とのつながり。これらを持たない人々は、煩わしさからなのでしょうか。干渉するとかしないとか、どこまでの範囲だとか、計画的につくるものではないような気がします。

いざというときのために関係をつくるのではなく、「自分がされてうれしかった」「だから自分も誰かの役に立ちたい」、そんな自然な人間の思いが、人との関係をつくるのではないでしょうか。東北でお世話になったから恩返しを! という方も、熊本を訪れていらっしゃいました。

ふだんから誰かの役に立ちたいと思う自分を育て、そういう人たちが横につながることが最大の力だと思います。震災ボランティアに参加する人たちは、そんな人たちではないでしょうか。われわれ、少林寺拳法グループ関係者も現地を訪れています。

私たちは、少林寺拳法という武道を活用し、そんな人間関係の輪づくりをしています。