Vol.05 平和への道とは?

2012/10/05

「日中の友好なくしてアジアの平和はありえず、アジアの平和がなければ世界の平和はない」
これは、少林寺拳法創始者・宗道臣の言葉です。
少林寺拳法は中国武術ではありません。したがって、ルーツとして中国寄りの考え方をしているわけではありません。かつて中国東北地方で民間人として敗戦を経験し、日本に帰国した宗道臣は、戦前・戦中・戦後を生き、その時代の教育と社会環境によって、人はどのようにでも染められてしまうという実感を持ちました。「イデオロギーや宗教や道徳よりも、国家や民族の利害のほうが優先し、力だけが正義であるかのような、厳しい国際政治の現実を、身をもって経験した。法律も軍事も政治のあり方も、イデオロギーや宗教の違いや国の方針だけでなく、その立場に立つ人の人格や考え方の如何によって、大変な差の出ることを発見した」という言葉も遺しています。
現代のような情報化社会においては、日中両国民が共に、何が正しい情報なのかを選別する問題意識と、感性というアンテナを持ち合わせていなければ、メディアが垂れ流す無責任な情報に乗せられ、判断を間違うことが多くなってしまうのではないでしょうか。
多くの先人の努力によって日中の国交が正常化し、今年が40周年の節目の年でした。国益だけが優先され、理解と協力に基づく民間ベースの交流にまで影響が及ぶ現在の状況は、一刻も早く打開したいものです。
責任ある立場にある人々は、言葉の一つ一つが及ぼす影響を、個人のパフォーマンスではなく、世界の平和、そしてアジアの平和に貢献する日本という視点から発してほしいと願います。
少林寺拳法は、流れに身を任せ、行き詰まったら人のせいにするという後ろ向きの生き方ではなく、自分の可能性を信じて努力し、本気で他人のことを考えて行動できる人を育てたいと創始されました。人も国も、「自己確立」と「自他共楽」が、平和への唯一の道のような気がします。