Vol.12 他人のことが本気で考えられる人間を育てたい

2013/07/01

「他人(ひと)の立場に立って考える」とはどういうことでしょうか。
 3年ほど前から子宮頸がんの予防ワクチンの接種が取り沙汰され、当時、画期的なワクチンではあっても3回接種する費用が5万円と高額なため、自治体での負担を求めるという動きがクローズアップされました。今思えば、その薬の副作用など危険性については全く一般には知らされていませんでした。私自身も、かつて母親が子宮頸がんで、大変な治療を受けて苦しんでいた様子を見ていましたから、自治体での費用負担についての署名活動に参加しました。
 ところが昨年ごろから、その副作用が問題視され始め、ワクチン接種を勧める“子宮頸がん制圧を目指す専門家会議”の「直ちに因果関係は認められない」という見解や、被害者の会とのやり取りなどが明らかになってきました。
 子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因ではないかとされるがんで、感染者の1000人に一人か二人の割合で発症する可能性があるとされています。接種の対象は、小学校6年生から高校1年生までとされていますが、その効果は永久ではなく、現在のところ9.4年といわれています。ということは、最長でも25歳までということになります。その年齢までに子宮頸がんを発症する人は、ほとんどいません。25歳以降は、定期的に検査を受けて、早期発見・早期治療するしかないのです。にもかかわらず、このワクチンに含まれる免疫増強剤による副作用は、不妊、運動障がい、ギランバレー症候群など、さまざまな症例が報告されています。特集番組で、手足が痙攣し、歩くこともできなくなった少女や、全く計算ができなくなったという学習障がいの少女、一過性とは限らない24時間続く頭痛に悩まされる少女の姿を見た私は、ある中学1年生の大切な女の子の姿が脳裏に浮かび、居ても立ってもいられず連絡を取りました。その女の子は、まだ一度も接種を受けていなかったのですが、大半の人は、周囲がみんな接種しているからという何となく当たり前の雰囲気や、副作用テストもあるという安心感から、接種してしまったようです。
 専門家会議の方々も、自分の娘や孫を目の前にし、そこで接種するのかどうか迫られたら、「因果関係が……」などと言っていられるでしょうか。 目の前で起こっていることが、自分や自分の大切な人の問題ではないから、平気で簡単に笑顔で言えてしまうのでしょう。今回の高市自民党政調会長の、「東京電力福島第一原発事故によって死者は出ていない」という発言にも同じ問題を感じます。心が福島の方々の元にないのです。それぞれ立場のある人は、今自分がよければいいのではなく、大切な人たちの将来を考えてほしいと思うのは私だけではないでしょう。
6月中旬になって、やっとワクチン接種の勧奨中止が発表されました。
 人の一生を左右することです。“大切な人”を目の前に置いて考えること。そして、どんなことも人の人生に関わる可能性があるという自覚を持って生きるために、「他人のことが本気で考えられる人間を育てたい」という少林寺拳法創始者・ 宗道臣の思いを受け継いでいきたいと思います。