vol.14 今こそ金剛禅

2016/05/02

osawa

合 掌
 この度の熊本県・大分県地震で被害を受けられた方、並びに影響を受けられた方におかれましては、心よりお見舞いを申し上げます。
 遅ればせながら私も、4月21日から23日にかけて、少林寺拳法グループの職員とともに被災地をまわって参りました。
 現地の道院や門信徒の皆様方の状況を確認するため、熊本県教区の有村利雄教区長をはじめとする地元の道院長とまわりつつ、僅かではございましたが支援物資を届けて参りましたが、やはり現地の様子は、報道で紹介される映像や写真より遥かに生々しく、震災当時の恐怖や、避難された皆さんのその後の不安はいかばかりであったかと胸を痛めました。
 本訪問の大きな目的は、すでに起ち上げている『少林寺拳法グループ熊本県地震支援対策室』が、今後どのような形態で被災された皆様へ支援すべきなのかを検討する意味合いもございました。今後、少林寺拳法グループへ募られるであろう被災者支援の善意と、現地の皆様の復興に向けた取り組みを有機的に繋げ、活かしていくべく努力する所存です。皆様のご協力をよろしくお願いいたします。もちろん、本山としても少林寺拳法グループとしても、全力で取り組む所存です。
 さて、現地で目にしたのは被災された道院長や拳士の方々の、「力愛不二」の実践でした。
 「半ばは自己の幸せを 半ばは他人(ひと)の幸せを」の教えのもと、自ら被災されながらも避難施設でリーダーシップを取り、炊き出しを行ったり、何か困っている人々のために手を差し伸べる姿に、思いと行動を同時に発揮される「力愛不二」の具現化を目の当たりにした思いです。この姿は、道院長や拳士ばかりではありませんでした。
 被災され、本当は人のことなど構ってはいられないはずなのに、笑顔で励まし合う被災者の姿に、人間の霊性を感ぜずにはいられず、釈尊の正しい教えをあらためて胸に刻んだ次第です。
 衣食足りて礼節を知る、という言葉がありますが、決して満足できる状態にあらずとも、自己の確立さえできていれば逆境にもへこたれず、協力し合って自他共楽の心境を生み出すことができる、そんな事実を、被災された皆様から教わりました。
 この頑張っている皆様の、少しでも力になりたいと強く思います。困っている人が目の前にいるのならば、手を差し伸べたいと思うのが人の情けです。起きている事実に目を向け、今の自分に何ができるか、考え、行動するのが金剛禅の教えです。
 熊本、大分だけではありません。東日本大震災をはじめ、近年多くの災害が国内外で起こり、その復興もまだ半ばです。
 目の前のことに流されることなく、苦境にある人のことを忘れず、日々邁進していきたいと思います
合掌再拝