Vol.14 楽しい仲間とともに 世界の平和と福祉に貢献せんことを期す!

2013/09/01

8月24~25日、大阪において「2013少林寺拳法世界大会 in Osaka, Japan 」が開催されました。4年に一度開催される世界大会ですが、少林寺拳法発祥国である日本が開催地ということもあり、世界37か国に普及する中、22か国から出場拳士3,000名、観客を含めると6,000名規模の大会となりました。
 少林寺拳法の特徴は、他人との比較競争ではないので、世界中から集まった拳士が抱き合って再会を喜び、新しく出会った仲間とすぐに友達になれるというところです。大会前の約1,000人の前夜祭でも、会場のあちこちで、国を超えた楽しい交流の輪が広がっていました。
 武道を普及することが目的ではなく、武道を手段として社会に貢献できる人を育てることが目的の団体ですから、「楽しい仲間とともに 世界の平和と福祉に貢献せんことを期す!」という今回の大会テーマが表すように、採点形式の競技だけではく、親子や夫婦、兄弟などのファミリー演武やシニア世代の演武など、少林寺拳法ならではの“発表の部”や、何のために少林寺拳法を学ぶのかを問いかける“テーマ映像”や“デモンストレーション”、そして拳士による“スピーチ”と盛りだくさんな内容でした。
 私たちがテーマにこだわるのは、とても魅力的で大好きな少林寺拳法を、ただ自分たちが楽しむだけではなく、そこで養った自信と勇気と行動力と慈悲心を、楽しい仲間とともに社会で生かすことに価値があると考えるからです。だからこそ、大会では常にテーマを設け、自分たちに問いかけるのです。
 いつも社会と向き合っていたい……そんな開祖のDNAを受け継ぐ仲間が世界中にいます。たとえ少林寺拳法であっても、競技だけなら、自分と他人との関係は競争相手になってしまいます。大会前に、心を開き、共に笑い、楽しく語り合えるこの環境、誰が戦争をイメージするでしょうか。
 しかし、地球上にはいつもどこかで戦争や紛争が起こっています。世界大会終了後、WSKO(少林寺拳法世界連合)本部(香川)に場所を移し、国際講習会が開かれました。その初日に、内戦に近い紛争状態にあるシリア情勢がニュースとなりました。
 政府軍が一般市民に化学兵器を使用したとして、今度は西側諸国が軍事介入も辞さないと言い始めました。イギリスの議会では否決されましたが、フランスは軍事介入に積極的です。もし、また「正義」を理由に多国籍軍の制裁という名目で攻撃が開始されたら、そこでまた一般市民が犠牲となるのです。イラクの大量破壊兵器保持疑惑同様、誰が化学兵器を使用したのかの詳細もつかめていないようです。
 かつて戦争を経験した少林寺拳法の創始者・宗道臣は、「戦争に正義などない。戦争とは愛するものを失うことだ」と言いました。力による抑止力は、政治や世界経済の枠組みのバランスのために、特定の人たちにとって有効ではあっても、一般市民には新たな憎しみや悲しみを生むものでしかありません。
 争いの世紀といわれた20世紀が終わり、21世紀に入っても、一向に人間の思考は進化しません。そんな中で、少林寺拳法という限られた世界ではあっても、「半ばは自己の幸せを、半ばは他人(ひと)の幸せを」という教えの下に、それぞれの国のそれぞれの地域で、「幸福運動」が広がっていくことを願っています。