Vol.15 ポジティブになれる環境を

2013/10/01

文部科学省の発表した2011年度の統計によると、年々増える小・中・高校生の不登校の理由のトップは、なんと「無気力」だそうです。
 いじめや何かに行き詰まり引きこもるという深刻な問題はよく耳にしますが、特段何かあったわけではなくても、「面白くない」「何のためにするのかわからない」「他人と関わることが面倒くさい」などという子供が増えているようです。中には、「どうせ頑張ってもいい仕事ないもん」などと大人の口調でいう子供もいます。どうしてそう思うのか聞くと、「だって、お父さんやお母さん、いつも言ってるもん」というのです。
 もちろん、親が子供に「頑張ってもいい仕事はない」と言っているわけではないのです。親が、家庭のでの会話で、職場での不満や上司や同僚の悪口を、発散するかのように言い続けているのを聞いて、大人になることへの夢や希望が持てなくなっているわけです。
 時に、頑張っている姿も見せ、親の楽しく生き生きした姿を見る瞬間が子供にあったなら、たとえ疲れ果てた姿や、時に愚痴をこぼす親の姿があったとしても、それはいい人生勉強だと私は思います。子供たちにとっての、人として生きるうえでの大切な“価値観”の醸成は、大人たちの生きざまによって大きな影響が出ると思うのです。
 少林寺拳法の世界でも、大会でいい成績を修められる子供が優秀で、そういう子供に育ててくれる指導者がいい先生だという保護者の方が時々いらっしゃいます。確かに、大会に出場したならメダルを取りたいと思うのは自然なことでしょう。しかし、人間は皆、持って生まれた可能性はさまざまなのです。たとえ入賞できなくとも、頑張って続けてきたことや、大会に出場できたこと、大勢の観衆の中でコートに立ち披露できたことなど、単なる慰めではなく、大いに評価されるべきことです。少林寺拳法の大会は、他人との比較競争ではないですから、結果に限らず楽しい大会なのです。
 今年8月に行われた世界大会で入賞したのは、日本とインドネシアの面々でした。ところが面白いことに、「とっても楽しい大会だった」「幸せいっぱいの空間だった」「また参加したい」と、その後続々と寄せられた声の送り主は、EU圏やアメリカ大陸からでした。中には、大会そのものには出場しないけれど、バカンスを兼ねて家族で来たという人たちもいました。これが、少林寺拳法の大きな特徴なのです。
 そこに行けば友達に会える、元気になれる、楽しい、自分を磨きたい、そんなポジティブになれる環境があれば、そして大人たちがそう生きれば、子供たちが“無気力”という魔物に取り憑かれずに済むような気がしませんか。