Vol.22 感性を曇らせず磨き続けていきたい

2014/05/10

30代のころ、問題に直面し悩み、出口が見つからないとき、私は頭の中でいったん果てしもなく広い宇宙に自分を放り出すことを覚えました。そしてそこから青く美しいといわれる地球を見て、そこにある日本を探しまた今自分のいる地域を探します。するとそこに針の先程もないかもしれない自分の存在を認識し、自分が今抱えている大きく真っ暗な悩みの箱だと思っているものが実は外から見れば大したものじゃないんだ……と客観的になれることを知ったのです。
 これは逃避ではなく、全ての物事は多面ですから、自分の目の前に広がるある一定方向からだけの視点で捉えては先をイメージすることができず、後手に回ったり判断を誤ったりするということを実感したからです。
情報があふれている現代社会にあっては、ついつい「知ってるつもり」「分かってるつもり」になってしまい、気がつくと前例・恒例・慣例に従って、全く新しい発想も改善もなく進化しなくなっていることが多くないでしょうか。
 今東京では各地のアンテナショップが話題を呼んでいます。立地条件もさることながら、ご当地自慢の県産品を、少子高齢化や健康志向などを考慮して、アンテナショップで販売して完結するものと、現地に行きたくなる入り口的役割りをはっきり分けているようです。それらをゆるキャラの個性でイメージづけるというものです。自分からの視点だけで見てしまうと、社会的感性が働かず「なぜ、こんなおいしいものが売れないのだろう……」となるのでしょう。自分の感性がビンビン働き発信できれば、相手の感性にもグッとくるものがあるはずです。
 コンビニエンスストアの中でも次々と新しい発想で進化するセブンイレブンの鈴木敏文会長が、こうなるために経営者として何をしてきたかと質問され、「ただ目の前に仕事があったから、それをやってきただけ。特別なことは何もしていない」と答えたそうです。
 誰かに言われたことをやっているだけでは、進化はありません。時代を読み、人を観察し、社会の動向や人の嗜好の変化や、生活環境の変化をいち早く察知する感性と、単なる慣例的常識を枠として持たない鈴木会長の思考が、どんどん目の前の仕事をつくってこられたのでしょう。そしてその感性次第で社会をも変えられることを志として持ち、楽しんでいらっしゃるのだろうと思います。
 社会が武道に、少林寺拳法に、何を求めるかではなく、少林寺拳法が社会に提供できるものは何かを、感性を曇らせず求め続けていきたいと思っています。