Vol.23 少林寺拳法グループのこだわる人材育成交流

2014/06/10

二年ぶりに中国を訪問しました。少林寺拳法グループは、創始者である宗道臣の「日中の友好なくしてアジアの平和はない。アジアの平和なくして世界の平和はない」という考え方の下、日中国交正常化直後から約40年以上にわたり交流を続けてきました。
 ここ近年、日中関係は正常化以来最悪といわれますが、果たしてそうでしょうか。政府間においてはそうかもしれませんが、文化交流・経済交流は続いています。続いているというより、頑張って続けているという方が適切かもしれません。お互い、引っ越すことのできない隣国であって、違いを認め合い、いかに協力関係を築けるかが平和の鍵であることは間違いがありません。
 政治・教育の問題がよくいわれますが、直接見て、聞いて、触れ合うことで解消できることはたくさんあります。対話とは、窓口を開けて待っているものではなく、自らが積極的に歩み寄るものだと私は思います。
 困難なときこそ、積極的な交流と率直な意見交換が必要です。私たちのような民間団体が成しうることは小さなことかもしれませんが、外交上のさまざまな駆け引きに惑わされることなく、ぶれずに積み重ねていくことが大切だと考えています。
 この状況悪化といわれる二年間、文化交流においては、中国を訪れる日本人より、日本を訪れる中国人の方が多いようです。今回の訪問では、長年交流を続けてきた団体の方々から、これまでどおり温かく迎えられ、「こういうときだからこそ、積極的に将来を担う人材育成交流が大切だ」ということで意見は一致し、今後の交流について意見交換をしました。
 河南省にある鄭州大学のアジア太平洋研究センターには、少林寺拳法グループが全国の会員や放送大学の協力を得て送り続けた専門書を数多く含む約3万2,000冊の図書が、「宗道臣文庫」として設置されています。最近、各界から注目されているそうで、新たに整備されており、活用している日本語科の学生や教授がうれしそうに話してくれました。
 少林寺拳法グループでは、1982(昭和57)年から、日本語研修のための留学生を河南省から受け入れてきました。初期のころの、当時20歳代の留学生も、今では40~60歳代となり、現役は省内各地で重要な立場で活躍しています。今回の訪問は、東京大学少林寺拳法部の50周年記念事業の締めくくりとしての、創部草創期の方々の記念訪中でした。大学時代に少林寺拳法を学び、卒業後さまざまな世界で活躍する方々です。共に訪れた中国各所で、出迎えてくれる留学生OBとの触れ合いや、協力関係にある禅宗発祥の地・嵩山少林寺との共同事業として建設した“少林希望小学校”の訪問などを通し、「少林寺拳法グループがこだわる人材育成交流」を実感されたことと思います。
 日中国交正常化以来、両国の関係が最も困難な時期といわれる今だからこそ、政治外交上の問題に振り回されることなく、少林寺拳法はアジアの平和、そして世界の平和のために、理解と協力に向けて努力する人材を育成することに努めたいと思います。