Vol.24 日本の誇るべき文化のために……

2014/07/10

弘法大師(空海)の生誕地、香川県善通寺市は、少林寺拳法総本部のある多度津町の隣に位置します。空海ゆかりの寺を巡る四国八十八ヶ所参りが、最近、若い方や外国人に話題だといいます。四国には、白装束のお遍路さんを地域の方々が温かく迎え、自宅やお寺の境内やさまざまなところでお茶や食事を出し労をねぎらったり、時には宿泊場所を提供するなど、さまざまな振る舞いをしてくださる「お接待」という風習が、今も大切に受け継がれています。
これまで日本には、相手を思いやる心や、譲り合い・助け合いの精神が、当たり前のこととして受け継がれてきた独特の文化がありました。

先日、地方出張で移動途中、JR在来線に乗ったときのことです。夕方の下校時間と重なったこともあり、ホームに向かうエスカレーターや階段には高校生が多く、電車にたくさん乗り込んでいました。始発駅から電車が発車すると、順番に停車駅と到着時間がアナウンスされました。そしてその直後、「高校生の皆さん、座席を一人で占領していませんか?」「大きな声で騒いでいませんか?」「喫煙したりしていませんか?」「周りの方々に不快な思いをさせたりしていませんか?」……と、次々と注意が呼びかけられたのです。
私は驚きました。きっとJRに対し、一部高校生たちの身勝手な行動に苦情が寄せられているのでしょう。しかし、小学生の子供じゃあるまいし、高校生にここまで細かく車内アナウンスで注意しなければならないのかと思うと情けなくなります。善悪というより、恥ずかしいことだということを、小学校までに教えることがとても重要だと思います。

「人前」という言葉が日本にはあります。かつては、人様の前でできることかどうかが、自分を律する一つ基準のようなところがありました。しかし今は、人前で変わったことをしたり、とんでもないことをすることが格好いいと勘違いしている人が多くなったのか、もしくは、完全に自己中心的で、周囲は眼中にないのでしょうか。

今日も、駅の構内で泣いてだだをこねる子供に、周囲が驚くような大きな声で罵声を浴びせ、それでも泣きながらついてくる子供を蹴り、転がった子供の頭を更に蹴り続ける母親の姿が通行人によってスマートフォンで撮影され、ツイッターにアップされたことが問題になりました。結局、その画像を撮った人が警察に通報したことで特定され、児童相談所などが入り調査が行われることになったようですが、家庭内の密室でのDV(ドメスティックバイオレンス=家庭内暴力)も大きな問題ですが、公衆の面前で、周囲から「警察呼ぶよ」と言われるまでやめなかったというその母親は、前述の、電車の車内で好き勝手に振る舞う高校生と何が違うのでしょうか。

日本の誇るべき文化や習慣が、音をたてて壊れています。私たち少林寺拳法は、そんな日本の誇るべき文化を守り、育て、伝えていくために役立ちたいと考えています。