Vol.30 次世代に伝えるべきことは…

2015/02/01

新年明けましておめでとうございます。

皆様は年末年始をどう過ごされたのでしょうか。ハロウィンやクリスマスは年々賑やかになりますが、日本のお正月の雰囲気は少しずつ薄れていくように思います。地方独特の習慣やそれぞれの家庭のお正月の味、大切にしたいですね。
 我が家では少林寺拳法創始者である父の好みもあり、また若い方がお年始に集まる家でもあったため、通常のお節にプラスして煮汁がなくなるまで煮詰めた親鳥の手羽先と手羽元が添えられます。お年始に来る方々はこの「トリ」が楽しみだったようです。
それを50年余り年末の二日間をかけて煮込んでいた母も亡くなり、今では娘の私を飛び越え母に育ててもらった私の息子が“伝承者”となりました。このお正月も息子に作ってもらった「トリ」を食べながら、「親から子や孫に伝えること大事だよね」と父や母の写真と話をしたところです。何かが消えるって、淋しいことですから。
しかし、淋しい……というだけではすまない取り返しのつかない愚かな非伝承があります。
次世代に伝えるべきことはたくさんあると思いますが、絶対に伝えなければならないことを今改めて意識したいと思います。
 年末、インドのある地方の駅で高圧線に触れ意識を失い線路脇に転落した野生の猿を、仲間の猿が助けたというニュースがありました。動かなくなった仲間を揺さぶったり噛み付いたりして刺激を与え、それでもグッタリしているところを今度は水の中に何度も落としたり引き上げたり、しばらくして意識が戻ったそうです。気がつきボーッと座り込んでいる仲間を気遣い背中をさすっているところまで、事の一部始終を離れた駅のホームから見ていた人たちから拍手が起こったそうです。他人のことは見て見ぬ振りをする人間もいるのに……本能とはすごい、と思って見た人は私だけではないはずです。何をしたらどうなると分かっていたわけではないにしても、「何とかしなきゃ」という思いとその後の行動には邪心がありません。
自分さえよかったら、今さえよかったらという自分勝手なエゴを恥じる“人間”でありたいと思います。
世界一被曝の怖さを知っているはずの日本が、他国での問題未解決の原発ビジネスや、武器製造輸出で国内の経済を立て直すと公言しています。確かに今の日本は超少子高齢化社会に向かって加速し、抱える問題は深刻です。しかし、立ち止まって考えなければなりません。“どこかの国で戦争が起こらなければ幸せになれない日本”になっていいとは私は思いません。自分たちさえよかったら、それでいいのでしょうか。
今、私たち大人が次世代にまず伝えるべきことは、おいしいものを食べたら「おいしいね」と家族で語らい、それを作ってくれた母親に「ママ、ありがとう」と笑顔でいえる環境が生み出す“身近な幸福感”のような気がします。これは家庭だけではなく人との関係に幸福感を経験していないと、他人の幸福を壊すことに鈍感になるような気がするからです。
「半ばは自己の幸せを、半ばは他人(ひと)の幸せを」、今年もここにこだわっていきたいと思います。