vol.36 我孫子道院 道院長 藤田竜太

2014/09/26

なってよかった道院長、お金では買えない宝物を得る
我孫子道院 道院長 藤田竜太

中導師・准範士、六段、423期。1967年10月、千葉県出身。高校生のとき、『秘伝少林寺拳法』(カッパブックス)を読んで、即座に少林寺拳法の門を たたく。1984年6月、東京本郷支部道場(当時)入門。大学時代の後半から、モーターレーシングに夢中になり、レース三昧の生活に……。レースに出場し ながら働ける職場を求めて、某自動車専門誌の編集部に記者として就職。しかし、雑誌作りの現場はあまりにも忙しく、少林寺拳法の修練は社会人になって最初 の4年間ほど休眠。その後、フリーランスのモーターリングライターとして独立し、現在に至る。自動車体感研究所(ドライビング・プレジャー・ラボラト リー)所長。少林寺拳法の修行は、1994年、我孫子道院に転籍・復帰。2004年12月、道院長交代により我孫子道院道院長となる。2013年より、千 葉武専講師補(予科担当)・千葉県教区副教区長も務める

我孫子道院 道院長 藤田竜太

aun_genki_vol21_02道院長になろうと思ったきっかけは?
武専に入学した頃から、漠然と「いつかは道院長に」と思っていましたが、一番のきっかけは子供を授かったことです。子供が生まれて、人の親になったとき、道院長になって、自分でこの子に少林寺拳法を教えてあげたいと思いました。ちなみに、道院長になるまでは、子供は好きでしたが“子供たち”は嫌いでした(笑)。(今は子供たちも大好きです)
 

aun_genki_vol21_03道院での指導方針・方法の工夫を教えてください。
『まんべんなく』
一言でいえば、まんべんなく、丸ごと少林寺拳法を味わってもらうということでしょうか。作務や鎮魂行、学科(法話)、基本は毎回必ず行っています。技法も法形の修練が大半ですが、演武や運用法も一通り学ばせるようにしています。

『体験重視』
「聞いたコトは忘れるが、見たコトは覚えている。そしてやったコトは理解していく」ということで、本山の帰山行事に参加したり、本山の講習会や武専に通う事を勧めたり、大会や各種行事への参加も積極的に呼びかけています。行事も、ただ出席するのではなく、宗道臣デーにしても、達磨祭にしても、合宿にしても、拳士が「楽しいから参加したい」と思えるよう、BBQや流しソーメンなど、「お楽しみ要素」とセットで企画するよう工夫しています。
※写真は恒例の夏合宿。我孫子道院の専有道場が“宿坊”となります。

『一人で前に進む(でる)と書いて「一人前」』
少年部でも、一般部(こちらはとくに有段者)でも、なるべく人前に出るチャンスを与えています。平日の少年部の時間は、交代で準備運動の号令、鎮魂行の主座、基本の号令を子供たちにやってもらっています。時には学科の発表も……。

『風通し良く』
自分の道場の殻に閉じこもらないよう、他所の道場に道院ごと出稽古に行ったり、逆に出稽古に来てもらったり、近隣の所属長の先生をご指導にお招きしたり、地域の技術交流会に参加したりと、視野を広げ、いろいろな角度から少林寺拳法の魅力に気付いてもらえるようにしています。
 

aun_genki_vol21_04道院長になって出会った感動エピソードをお聞かせください。

楽しい思い出ばかりで、特に苦労した事は????

感動したのは、私が道院長になったら、武専の仲間や同年代、同拳暦の仲間たちが何名か続いて、道院長・支部長になったことです。きっとあいつ(藤田)で道院長が務まるなら、自分だって……と決意してくださった方が多かったのでしょう(笑)。

でも、こうした先生方の存在がとても心強く思えますし、その頃所属長になった先生方とは、何かにつけ連絡を取り合い、交流を深めさせてもらっています。また、千葉県内のベテランの先生方を中心に、さまざまな高段者の先生方にも目をかけていただいて、陰に陽に、ご指導をいただけるようになったのも、道院長になれたからこそと感謝しております。

道院内では、新入門者が来れば大喜びし、昇級者が出れば拍手をし、昇段者が出れば祝杯をあげ、受験、進学、転勤、転居などで門下生が道場を離れれば涙を流す……という毎日です。でも、一番感動したのは、やはり新入門から自分が育てた弟子が、最初に黒帯になったときでしょうか。

また、小学生の娘と息子も入門してくれて、現在、一緒に道場へ通えているのも、道院長になる志望動機のひとつ(夢)がかなって、嬉しい限りであります。

あとは……そういえば、こんな話もありました。
http://ameblo.jp/shorinjikempo-abiko/entry-11076262908.html
「ちょっと、じゃなくてすごくいい話(誕生日の自他共楽)」

※写真は、我孫子道院夏合宿の一コマ。夕食後のレクリエーション「行コンテスト」
 

aun_genki_vol21_05道院長として今後挑戦したいことや夢はありますか?
我が道院の専有道場は、ものすごく立派で、人がうらやむような好環境が整っています。これは私の力ではなく、先々代道院長の志賀先生が建てられた道場なのですが、他所の先生・拳士がいらっしゃると、「すごく立派な道場ですね~」と、道場“だけ”は褒めたたえられます!? ですので、道場だけでなく、「道院長も立派ですね~」と言ってもらえるようになるのが、当面の目標です(笑)。

また、女性拳士が少ないので、女性拳士を増やしたいですね。特にママさん拳士を(現在1名)。もちろんパパさん拳士も増やしたいですし、なにより親子を増やしたいです。そして、どの世代もまんべんなく集め、現役拳士を100名にするのが目標です!! と同時に、いつかは門下生から道院長・支部長を複数名誕生させたいですね。その前に、現役拳士たちに、「我孫子道院で少林寺拳法をやれてよかった」と思ってもらい、我孫子道院の拳士であることに誇りを持ってもらえる環境を整えたいです。
 

aun_genki_vol21_06最後に、将来道院長を目指す全国の拳士にエールをお願いします。
「道院長になるのはたいへんだ」「道院長になってもたいへんだ」という声をよく聞きますが、少なくとも私自身は、「道院長になってよかった」と心底思っているので、「(少しでも)やってみてもいいかな」と思っている拳士は、だまされたと思って道院長になってみてください。

時々、「指導者は損だ」という人がいますが、門下生が指導者から何かを得ているとしたら、指導者自身も必ず門下生から何かを得ているはずだ、というのが私の偽らざる実感です。事実、私の場合、門下生へのアウトプットが多いほど、自分のインプットは増えてきました。きっと、エネルギー保存の法則みたいなもの(?)が働くのでしょう。私も道院長になってちょうど10年になりますが、この間、お金では買えないすばらしい宝物をたくさんいただくことができました。

えっ、道院長になるコツですか? 

それは、あっちこっちで「道院長になりたい!」と言い続けることです(笑)。そうしたら、いろいろなところから応援してくれる人が現れたり、助言をしてくださったり、知恵を貸してくださる方が集まってきます。肝心なことは、「できるからやる」ではなく、「やるからできる」ということ。拳禅一如、力愛不二の教えの通り、行動が先です。

大丈夫、本気になれば何とかなります。私だって、なんとかなってきたんですから(笑)。