vol.39 東遠大東道院 道院長 福田有希

2015/03/20

努力は必ず報われる、思ったら行動あるのみ
東遠大東道院 道院長 福田有希

中導師・准範士、七段、488期。1972年2月、静岡県生まれ。池新田高等学校卒業後、地元企業に就職。その後、脱サラし、農業を営む。1989年11月、浜岡道院(故・朝比奈正和道院長)に入門。2000年、道院長交代により、浜岡道院道院長に就任。2003年、東遠大東道院を設立、現在に至る。静岡大学少林寺拳法部監督、静岡県少林寺拳法連盟理事、同連盟武専講師も務める。

東遠大東道院 道院長 福田有希

aun_genki_vol24_02道院長になろうと思ったきっかけは?
私は入門する数週間前までは、甲子園を目指す高校球児でした。小学生の頃から約10年間、野球一筋でしたが、努力の甲斐もなく、最後の夏の大会では、入ったばかりの1年生がベンチ入りする中、私はベンチ入りすることもなく非常に悔しい思いをしました。私たちのチームは、秋の新人戦の県大会で優勝した強豪チームでしたが、夏の大会では3回戦で敗退してしまったのです。甲子園を目指してかなり厳しい練習をしてきたこともあり、レギュラーだった人間は悔しいながらもそれなりに満足感はあったようです。しかし、私は「自分自身が努力しただけ報われるものをやってみたい。野球では果たせなかった頂点まで上り詰めてみたい」と考えていました。前々から武道に興味があったこともあり、たまたま近くにあった道院に足を運ぶことになりました。

一般拳士の移動稽古を「かっこいいな」と思いながら見ていた矢先、「ズバッ!」と道院長の故・朝比奈先生の廻蹴が、ほぼ真上に上がり、蹴り足が頂点で止まっていました。その時、「これはただ事ではないぞ。練習を積み重ねていけばあの様になれるんだ」と思いました。さらに、単なる武道やスポーツとは違う少林寺拳法の考え方を一通りお聞きし、「私は一生懸命努力する人間を見捨てたりしない。努力すれば必ずなれる」という先生の言葉にたいへん感動し、もうこれしかないと入門しました。

2000年6月、朝比奈先生が病で亡くなられた時には、先生しか見ていなかった私は少林寺拳法をやめようか非常に悩みました。しかし、入門当時の先生の言葉を思い出し、自分しかいない、と決断し道院長になりました。

aun_genki_vol24_03道院での指導方針・方法の工夫を教えてください。
私が道院長になろうと思ったきっかけでもある「努力している人間を見捨てないこと」、つまり努力した結果を評価したいと考えています。少林寺拳法は記録が出る競技と違って成果が分かりにくく、ともすれば指導者は拳士の間違え探しをしてしまいがちです。そのため、できたら必ず評価する(褒める)こと、1回叱ったら10回褒める(叱った本人以外も)ことを心掛けています。また、技の修正は一度に多くするのではなく、一つ一つ、できたら次に進む、というようにしています。

それから、指導法以上に何より人間関係を大事にしており、「兄弟のごとく」「親子のごとく」「恋人のごとく」、拳士に接するようにしています。東遠大東道院は大家族のような関係になっています。

aun_genki_vol24_04道院長になってよかったことは何ですか。
東遠大東道院をスタートするにあたり、最初は修練場所がない、拳士がいない、とまさにゼロからのスタートでした。どうにか20畳くらいの、コンクリートの上にタイルが貼付けてある床の旧役場の会議室を借りて活動を始めましたが、なかなか拳士が集まりませんでした。いくら待っても人が来ない。今日はたくさん来た、と思えば暴走族の一団(20人くらい)の冷やかしだった……という状況でした。

待ってダメなら行動を起こすしかないと思い、あらゆる店にポスターを貼らせてもらってアピールしました。少しずつ拳士が集りだすと、「近所で興味のある人を連れてきてください」と毎回話をしていました。

10年以上が経過し、専有道場も建った今では、拳士も60人を超えるようになり、「悪戯だった子が落ち着いてきた」「消極的だった子が少し積極的になった」などの評判が、拳士や保護者以外からも耳に入るようになってきました。これからも私自身もっと成長し、故・朝比奈道院長のように、感動を与える人間になりたいと思っています。

aun_genki_vol24_05道院長としてこれからの夢は何ですか?
私は乱捕りが好きで、練習の度に若い人を捕まえては乱捕りばかりしています。挑戦したい事自体が、今行っていることの延長線上にあると考えていますが、何歳になっても若い人と乱捕りを楽しみたいと思っています。年齢とともに少しずつ衰えていく体力ですが、知識と技術でそれを補い、この先もずっと乱捕りを楽しみたいです。

また、夢というか目標ですが、道衣姿を見たら、それが他武道のものであっても、「あなたも少林寺拳法をやっているの?」と間違えられるくらい、少林寺拳法を地域に広めていきたいです。実際、親道院の浜岡道院がある御前崎市ではそのように言われています。浜松道院が今年で50年という節目を迎え、地域に根付いているからこそ、そう言われるまでになっているのですが、東遠大東道院も浜岡道院のように、この地で存在感のある道院になっていきたいです。

aun_genki_vol24_06最後に、将来道院長を目指す全国の拳士にエールをお願いします。
「道院長になりたい」と思ったら行動あるのみです。私は失敗の連続でしたが、失敗から得られるものもあり、それなりに知識がついて何とかなっています。また、努力し行動することによって、良い方向が見えて来るとともに、同じ方向を向いて行動してくれる仲間が必ず現れます。努力しただけ報われるという醍醐味は、一拳士・幹部の時以上です。まずは一歩踏み出してみましょう。