vol.44 一歩一歩

2016/02/01

 四国山地に位置する石いし鎚づち山は、西日本最高峰の山で、日本百名山の一つ。男性的な山容は、切り立つ断崖の岩稜と原生林に覆われ、四季折々に変化するとても魅力ある山だ。初めて登山したのは25年前。一歩一歩必死に登り、気付くと頂上にいて、その瞬間は登り切ったという達成感があり、とても嬉うれしく思った。しかし、登頂目的に眺望を楽しむ余裕はなかったため、その登山道は苦しい記憶が強くある。ここ10年は、毎回楽しみに登る自分がいる。それは、頂上以外の登り下りの中で、眺望や山の香り、風や空気、鳥の声など、自然のエネルギーを五感で感じ、感動値が上がるからだ。道中何かを発見し、「へー」と思うと心が動き、同じ山を何度登っても受け止め方が変わる。頂上だけを目的にした思いは、時には苦しみの元を自身でつくってしまったように思う。現在まで毎年続けられるのは、その日そのときの体調や体力に合せて、自然の法則に従う謙虚な気持ちと、今年も無事登ることができたという感謝の気持ちによって、清すが々すがしい頂上を感じることができるからだ。開祖は、「人間、死ぬまでが修行だ」と教えられた。修行とは、難行苦行だけではない。何かに気づき、自分の糧になるよう、生涯を通じて体力に応じた技を極め、術を楽しみ、無理のない修行を積み重ねていきたいと思っている。
(財務部 部長 宮本 公己)